社畜童貞は深夜に未確認生物を拾う

白鷺雨月

第1話 深夜のコンビニをでたところで拾ったのは未確認生物

 ピロンピロンとコンビニの来店音が聞こえる。

 時刻は深夜0時であった。

 社畜の僕はいつもの通り、会社帰りに最寄り駅前のコンにににより、適当に弁当とメロンパンを購入する。

 コンビニのメロンパンだけが社畜の僕にとって唯一の癒しであった。

 セルフレジで会計を済ませた僕はピンク髮の女子店員のありがとーしたという言葉を背中に受け、店を出る。

 

(あなたの脳内に直接語りかけています)


 突如頭の中に女の声が響く。

 どこか僕の好きな声優にその声は似ていた。

 やばい、社畜は働き過ぎてついに幻聴が聞こえ出したのか。しかも童貞をこじらせてもいるから女子の声が頭に響くようになったのか。

 僕はある意味冷静に、自己を分析した。

 分析して嫌になってきた。


(あなたは星野鉄雄さんですね)

 脳内に幻聴は語りかける。 

 幻聴が呼ぶのは僕の名前だ。

 僕の名前は星野鉄雄ほしのてつおという。去年大学を出た社畜童貞である。

 童貞なので当たり前だけど彼女なんてのは生まれてこの方いたこはない。


(星野鉄雄さん、下を見てください)

 声にみちびかれるように僕は足元を見る。

 電信柱の街灯に照らされて、何かがうごめいている。ざっくりと全長五十センチメートルほどのぶよぶよとした肉塊であった。

 肉のスライムと言えば妥当だろうか。

 夜風に吹かれて、その肉のスライムはぷるぷると震えていた。

 それは控えめにいってかなり気味の悪い生物だった。いや、生物といっていいのか。

 それすらわからない。

 ただ理解るのはそいつは気味の悪いものであるということであった。

 そう、あれだ未知の生物いわゆる未確認生物だ。

 UMAの類だ。


(私は今言語機能を持ちません。なのであなたの脳内に直接語りかけています)

 そんなどこかネットミーム的なことを言われても困る。


(私はこの星にはるか星の海を越えてやってきました。しかしこのような姿ではまともにコミュニケーションが取れません。何人かの精神にアクセスログしたのですがことごとく失敗しました。そしてやっと私の声を聞くことができる人間を見つけたのです)

 肉のスライムはぷるぷると震えながら、僕の脳内に語りかける。

 こいつの言う事を信じるなら、僕はようやくみつけた話をすることができる人間だということか。

 なんだかこいつのことが可哀想になってきた。

 僕も彼女もいたことのない寂しい社畜童貞だ。

 僕は肉のスライムが気持ち悪いと思いつつ、同情するようになっていた。


「君の名前は?」

 僕は肉のスライムに語りかける。

 しゃがみ込み、肉のスライムを見つめる。

 どことなく桃色に変化したような気がした。

 照れてるのかな。

 だとしたらちょっと可愛気があるかも知れない。


「私の名前はミーアといいます。星の海を百年航海し、この星にようやくたどり着いたのです。私の住んでいた星は寿命を迎えて爆発してしまいました。わずかに生き残った私たちは船に逃れたのです。そして長い航海の末、この星にたどり着いたのです。たどり着いたのはいいのですがあまりにも生態系が違い、私たちはこうして拾われるのを待つしかない状態になってしまったのです」

 ミーアと名乗る肉のスライムはかなりSF敵なのか言った。

 故郷を失った漂流者というわけか。

 なかなか可哀想な話だ。

 僕は肉のスライムに手を差し伸べる。

 ぷるぷると震えながら、肉のスライムは僕の両の手のひらに乗せる。

 意外と温かくて、手触りは柔らかくて気持ちよかった。

 触ったことは無いけどもしかすると女の子の胸もこんな感じかも知れない。


「とりあえず家にくる」

 ミーアにそうきくと彼女はぷるぷると震えて喜んだ。少なくとも僕にはミーアは女性だと思われた。

 声がそうだからという、ただそれだけの理由だ。

 どうせなら女子高生を拾いたかったとおもうけど、僕には肉のスライムのミーアであった。


 僕は仕事に使うリュックサックにミーアを入れて、自宅に帰った。

 

 ワンルームのマンションに帰り、僕は割り引きシールのついた唐揚げ弁当を食べる。

「ミーアも何か食べる」

 宇宙を旅してきたのなら、きっとミーアもお腹を空かせているに違いない。

(そこの甘い匂いのものが食べたいです)

 ミーアが言う甘い匂いのものとはメロンパンに違いない。

 僕はメロンパンの袋をあけて、一口大にに千切る。ミーアには口がないのでどうやって食べるのだろうか。

 試しに千切ったメロンパンをミーアに押し付けるとすっと消えていった。

 どうやらそれで食べられるようだ。

 僕は残りのメロンパンを全部一口大にちぎり、ミーアに食べさした。

 ミーアは美味しそうにぷるぷると震えた。


 食事を終えた僕はシャワー浴びて、直ぐに寝た。

 明日は休みなのでおそくまで寝ていられる。

 ミーアも寂しそうにしていたので、布団に入れて眠った。

 ミーアは温かいので良い湯たんぽ代わりになった。


「ねえねえ、鉄雄さん。起きてよ」

 可愛らしい女の子の声が聞けえる。

 僕が目を覚ますとびっくりするほど可愛らしい女の子が僕を見ていた。

 僕と目があうとその女の子はにこりと微笑んだ。

 なんで、こんなところに幼稚園時がいるんだ。

 たしか僕の記憶が正しければ深夜のコンビニを出たところで拾ったのは肉のスライムだったはず。

「おはようございます鉄雄さん。私はミーアだよ」

 その美少女はそう名乗った。

 

 

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