第4話
夜が深まり、星空が静かに輝く中、柚葉、海斗、蓮は館の裏山の奥にひっそりと隠された秘密の場所へと向かった。彼らの胸には、未知の真実を突き止めようとする決意と不安が入り混じっていた。
「ここが、兄貴が言ってた場所…」蓮が静かに呟いた。
森の中はひんやりと冷たく、木々のざわめきが耳に響く。やがて、古びた石段と扉が現れた。それはまるで、時を超えた秘密の入り口のようだった。
「怖いけど…行こう」柚葉は意を決して扉に手を伸ばした。
扉は重く、きしむ音とともにゆっくりと開いた。中は闇に包まれ、ただ少しだけ奥に灯るキャンドルの光だけが頼りだった。
「ここに、真実があるの?」海斗は緊張しながらも、足を踏み入れた。
館の奥には、古びた棚に並ぶ日記や証拠品、写真の数々があった。その一つには、若き日の蓮と兄貴の姿が映っている。
「これ…」柚葉が指差したのは、古い新聞の切り抜きだった。
【「町の闇の事件:未解決の謎と家族の関係」】
そこには、兄貴の名前とともに、彼の幼少期の写真と共に、「この事件は家族の秘密と深く関わっている」と書かれていた。
「お兄さんは、町の闇の事件に巻き込まれていたの…?」柚葉は絶句した。
蓮は静かに頷きながら、その場にあった日記を手に取った。
「兄貴は、俺たち家族の隠された過去を調べていた。そして、真実を隠すために、多くのものを犠牲にしてきた。でも、その秘密は、今もこの場所に眠っている。」
その時、ふいに壁に貼られた写真の中から、別の影が動いた。影は徐々に現れ、幽玄のような姿で姿を現した。
「お前たち、早く気づいたのか」低く静かな声が響く。
それは、蓮の兄の霊だった。
「お前たちには、真実を知る覚悟が必要だ。だが、その前に、もう一つだけ伝えたいことがある」
霊は静かに語り出した。
「この館に隠された秘密を解き明かす鍵は、お前たちの中にある。記憶の奥底に封じられた過去を呼び覚ますことだ」
その瞬間、館の空気がひんやりと冷たくなり、壁の影が次第に形を成していった。
「お前たちには、運命を切り開く力がある。真実は、決して隠されたままではいられない」
霊の声が遠ざかるとともに、館は静寂に包まれた。
柚葉は目を閉じて、深呼吸をした。
「私…あの時の記憶を取り戻すわ」
海斗も決意を込めて言った。
「真実を追い求めて、未来を変えよう」
蓮は静かに微笑みながら、三人を見つめた。
「俺たちの運命は、今、動き出した。どんな闇も、光を見つけられると信じて」
彼らは手を取り合い、暗闇の中に一歩踏み出した。
この夜、彼らの心には新たな希望とともに、秘められた過去の扉が開かれた。
静寂の中、三人は館の奥深くに入り、霊の言葉に導かれるままに過去の秘密に触れ始めていた。壁に貼られた写真や日記、証拠品の中に、彼らは次第に真実の断片を見つけていった。
「これ…」柚葉は古い写真の前で立ち止まった。そこには、幼い頃の自分と兄貴が映っている。背景には、見覚えのある古い町並みと、何かを隠すような暗い森が写っていた。
「私、あの時のこと覚えてる…」柚葉は静かに語り始めた。
その瞬間、遠い記憶の扉が彼女の心の奥底で開いた。
――彼女は、幼少期に家族と一緒に町の祭りに参加し、兄と遊んでいた。そして、突然の叫び声とともに、暗い森の中に連れ去られた記憶を。
「私、あの時…兄貴に追いかけたの。だけど、その途中で何かが起きて…」柚葉は涙をこらえきれずに言った。
海斗はそっと彼女の肩を支えた。
「柚葉、その記憶はきっと真実だ。もしかしたら、あの時の出来事が、今も我々の運命を左右しているのかもしれない」
蓮は静かに、しかし確信をもって語った。
「兄貴は、あの事件の真相を隠すために、この館に秘密を封じ込めていた。でも、真実は絶対に闇の中に沈めてはいけない。俺たちが、それを解き明かすんだ」
その時、館の奥から微かな光が漏れ出した。扉の向こうに何かがあることを示していた。
「行こう」蓮が静かに促した。
扉を開けると、そこには古い木箱と、地面に埋められた箱があった。蓮は丁寧に木箱を開けた。
中には、兄貴が残した手書きのメモと、町の地図があった。
「これが、兄貴が隠した真実の場所だ」蓮は真剣な表情で言った。
メモにはこう書かれていた。
「真実は、あの森の奥にある。お前たちだけが、その扉を開けられる」
柚葉は、その言葉を聞いて、心の奥底にある何かが確かに動き出した感覚を覚えた。
「私、あの森に行く。兄貴が残した手掛かりを、絶対に見つける」彼女は決意を新たにした。
海斗も静かに頷いた。
「俺たちの未来は、今ここから始まる。真実と向き合って、何としても闇を乗り越えよう」
そうして、三人は森の奥へと足を踏み入れた。闇夜と星空の下、彼らの前には新たな謎と試練が待ち受けている。
それでも、彼らの心には希望と勇気が灯っていた。
夜の静寂の中、森の奥に眠る秘密の扉が、今まさに開かれようとしていた。
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