あなたは、憎悪していた相手に愛を抱くことは出来るか

財も地位も力も持つ御子柴帝斗にある理由から姿を変えた狗飼昂己の愛について語られる本作。
前作の鏡の中の共犯者と同様に、卓越した文章力と描写は実に美しく、かつて憎悪していた御子柴帝斗へ向ける狗飼昂己の愛は狂気を感じながらも綺麗なものだと自然に思わされるものになっている。
主人公のみならずマダムと呼ばれる権力者の老婆や婚約者の九条鈴愛もまた魅力的な登場人物であり、特に九条鈴愛に至っては可憐で美しい女性でありながらその考えは読者からも予想がつかず、他の登場人物達よりも一歩先の位置にいるような人物だと言える。
あらゆる苦しみと努力の先で得た様々なものと御子柴帝斗への愛の果てに狗飼昂己を待っているのは、果たして何なのか。それはあなたの目でしっかりと確かめてほしい。