2025 全国創作コンテスト 詩

夏目凪

愛していたかもしれないが

金木犀になりましょう

僕らはきっと愛せるでしょう

オスに偏るペンギンの

ペアも二人で愛せるでしょう


金木犀の香りに沈む

今日も下校の帰り道

足元に巣食う僕らの憂鬱も

踏み潰しては香りが包む


青春に似た不安感

首絞められた恐怖感


絡み合っては堕ちてゆく

僕らの愛の行き着く先は

幸福にあり

幸福もなし


ペンギンの勘違い

愛し合っては二人きり

蠱毒を凌ぐほど深く

互いを見合い潜りゆく


端から見れば滑稽で

人から見れば鈍感で


それで、それで

死よりも先に残るもの

愛していたかもしれないが

証の一つも残せずに

彼らはふっと消えていく


愛の印も消えていく

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