お宿

　狂（くる）った月夜の　狂（くる）った丘（おか）に、

　狂（くる）ったお宿（やど）が　ありました。

　亭（てい）主（しゅ）とメイドが　気（き）狂（ぐる）いならば

　お客もみィんな　キチガイで

　犬や猫（ねこ）らも　キチガイで

　子供が泣きだしゃ　おとなは叫（さけ）び

　男が蹴（け）とばしゃ　女は殴（なぐ）る。

　それ見て時計が　正午を打てば、

　とびだす鳩（はと）奴（やつ）ぁ　ひとつきり。　

　人も家（か）畜（ちく）も　罵（ば）声（せい）に罵（ば）倒（とう）、

　上へ下への　大（おお）騒（さわ）ぎ。

　そうして亭（てい）主（しゅ）は　たか笑い

　ひとり残らず　ぶった斬（ぎ）る。

　しまいにゃ亭（てい）主（しゅ）が　首くくり、

　あとには狂（くる）った　お宿（やど）がのぉこった。