23日の還り道
すずめ
第1話
小さい頃から、親には厳しく育てられてきました。
「誰にでも上品に振る舞いなさい」
「勉強と運動、どちらも努力しなさい」
「ゲームなどは禁止」
「好き嫌いはせず、健康を保ちなさい」
全て親の愛だと思っています。
両親の期待に応える為に、良い未来を築く為に、精一杯頑張りました。
友達はいませんでした。
みんなと共通の趣味等が無かったからだと思います。
でも、学ぶ為に学校に行ってるのでそこまで気にしていません。
「あたしのこと、もうちょっと気にしてよ〜!」
「…びっくりしました。」
「ベンチで意味分かんない本読んでるより、あたしと遊ぶ方が絶対楽しいよ!」
彼女は、入学式の時からずっと話しかけてくる人です。
名前は…。
「あっ、またあたしの名前忘れたんでしょ〜。ほら、これ。」
そう言って彼女はヒマワリを渡してきました。
「花を摂ってはダメですよ。」
「だから〜、これ見て思い出さない?あたしの名前。」
「…。」
ヒマワリ…ひまわり…向日葵…。
「日向さん?」
「ピンポーン!正解。あたしはちゃんと覚えてるんだから、絶対忘れないでよ!あおい!」
あおいは、私の名前です。
漢字で書くとちょっと難しい「葵」。
日向さんは、なぜか他の人より積極的に話しかけてきます。
「ねぇ!何して遊ぶ?」
「…勉強になる…遊びとかですかね。」
「それ遊びじゃなくない!?あっ、クイズとか?なぞなぞとか面白いよ!」
「なぞなぞ?」
「前テレビで見たなぞなぞ出すから、あおい答えて!」
私はよく分からなかったのですが、うなづいてしまいました。
「ラクダ、カエル、クマの後ろ姿を見たら何かが出て来ました!さぁそれはなんでしょう?」
「後ろ姿を見て出て来るもの…?分かりません。答えはなんですか?」
「早いなぁ…、まぁ正解は『だるま』!」
「どういうことですか?」
「ラクダとカエルとクマの一番後ろの文字を繋げて読んだらダルマになるでしょ?結構簡単な問題なんだけどなぁ〜。」
「解説を聞いても意味が分からないです。勉強にはならないと思います。」
「ん〜そっかあ。」
彼女は少し黙って、私に言いました。
「学校楽しい?」
少しだけ、声のトーンが下がっていました。
「楽しいも何も。勉強をして帰るだけです。」
「もっと、楽しそうに生きてよ。」
「…どういう意味ですか?」
「いや!なんでもない!もうすぐ授業始まるね。一緒に教室戻ろ!」
「…分かりました。」
彼女は、時々会話の内容とずれたことを言って、何度も聞かなかったことにしてと言います。
私の頭にはずっと、その言葉が引っかかっています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます