【短編】気がつけば、もう近くに。

文月余

【(1/3)姉:妹の死と彼との出会い】

3年前、妹は突然この世を去った。病気や自殺などではない。いつもどおりの日常。それは、あまりに突然の出来事だった。当時まだ大学生であった妹は、通学途中、路上で刺されたのである。


事件発生が早朝であったため目撃者もおらず、捜査は早々に暗礁に乗り上げた。

今もまだ、犯人は見つかっていない。


私たち家族は、あの日から大きく変わってしまった。


元々高齢であった父は会社を早期退職し、朝と夕方の2回、今も必ず毎日、最寄駅前で情報提供を求めるビラ配りを行っている。

母は気丈に振る舞ってはいるが、口数は減り、以前のような笑顔を見せる回数は少なくなった。


あの日以来、家族で出かけることはほとんどなくなってしまった。


とても明るく、優しい妹だった。

私にとって、たった1人の姉妹だった。


私が風邪を引いたときも、自分も罹患していることを隠して、自分が倒れるまで看病をしてくれた。

受験に失敗して落胆する私を、「お姉ちゃんは頑張ったよ。」と言って強引にカラオケに連れ出してくれることもあった。


私は、いつも助けてもらってばかりだった。


妹と仲が良かった私は、あの日を境に会社を休みがちになった。

あれほど好きだった仕事にも身が入らず、気がつけば退職を考えるようになっていた。


−そんなときに出会ったのが、彼だった。

彼は、私が勤める会社の管理部門に転職してきた。部署は違ったが、職場の休憩室で頻繁に話をするうちに、いつしか仲が深まり、交際が開始した。


彼は物知りで、妹と同じく、とても優しい。私のこともよく理解してくれる。

私が疲れているときには、さりげなく気を遣ってくれる。私の好みも分かってくれている。誕生日や記念日も、忘れずにお祝いしてくれる。初めてうちに来たときも、真っ先に妹の仏壇に手を合わせてくれた。


ただ、少しだけ、心配性がいき過ぎている。


帰宅後、私が彼からの電話に出なければ必ず怒る。休日に関しては、いつ、どこで、誰と、何をするか、全ての予定を把握しようとする。最近では、仕事中に他の男性と話をするだけで嫉妬する。


だけど、それほど私を特別に思ってくれているのだと思う。私にとっても彼は、特別で、大切な人だ。


彼は、早く一緒に暮らしたいねと言ってくれる。そう言われるたびに、私は彼の目を見て、微笑んで返すようにしている。


私は、そのときがくるのを、心待ちにしている。

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