Wall Gatsby

君がどこかで歌うとき

僕はそこらで眠ってる


わたしとあなた、ふたりきり


きっといつかね、笑ってる


ふたりの会う日 相談ね・きっといつかね。また会える


ぼくらいつでも 笑ってる


ふたりひとりで 渡り合う


ここから君は ひとりきり

ぼくとぶたりで 笑ってる


今日という日は また来ない

またねと言っては 教えない(内緒ばなし)


そんなある日、僕は彼女に手紙を送った。そしてその手紙には題名があった。

【題:内緒の話】


きみと会ってから、3年の月日が経ったね。

いつもここから始まる話が退屈で、きみは僕らから逃げまくっていたね。


3年間、僕はきみを追い立てまくった。朝のキッチンでトーストを焼くとき。郵便受けに新聞を取りに行くとき。僕らはきみを追いかけ、そして諦めていった。


「どういうこと?」ぼくが抽象的なことばを使えば使うほど、きみの言葉は逃げていった。


「もう遅いわよ」きみが途中で辞めたとき、残されたのは僕だけではなかった。


きみが逃げれば逃げるほど、ぼくのパトカーはリンリンと赤いサイレンを鳴らして追い立てた


きみが死んでからというもの、僕には殺す生き物がなくなった。

そして最後に言おうと思う。きみに勝る愛はない。NOTHING

ぼくはきみに勝ちたい。負けたい。でも、忘れられていたくはない。


追いかけられては捕まえて、きみの心はFLY FLY 逃げていく。


僕はひとりで、取り残されてしまった。無人島で暮らすこと。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

寄越された手紙には、終わりがなかった。そして続きもなかった。

わたしはひとり、ピンク色のブランケットの掛ったベッドに座り、彼を呼び続ける。

心で呼んで、頭で探して、ありったけの知性を用いてその在処にたどり着く。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そこには病人が横たわっていた。私という名の心の声。耳を澄ませれば聞こえるはず。

「もう遅い」彼は言った。声は、開く扉から漏れる光の向こうから届く。私の声。死んだはずの、昔のだれか。

「わたしに会いに来たの?」もう遅い。ただ、判断するには早すぎる状況の変化に、ついて行けない。

「なぜなの?」どうして私に会いに来ちゃったの? 私の心に届く声。どちらの私が彼の声になっているのか。その声の主は、私でない。誰でもなければ話にならない。


届く声

わたしとふたり 届く声


私の在処は そこなのに

わたしにすがって 頼っては


ここでないところで してること

こころのありかで やったこと


してみたい してみてもいい?

彼氏に聞いてみて、許可が下りれば わたしの中から、光の子が生まれる「そう そう」

ゆっくりでいいから。助言する


でも、もう遅い わたしのピンクの部屋に 光はない ことば こころ 無であること


そう わたしは無になりたい なんでもないこと 耳をすますこと そして わたし 彼


「きみとここに来たことはあるかな」わたしのなかから子の声が聞こえる 耳 きこえる


耳をすませば、うたえるよ


歌がなければ わたしはない 


きみに生まれてよかったと MUSIC

声がきこえる わたしを 呼んでいる そしていつまでも・・・呼んでいた 歌



「歌声は 心の声・さっき来たひと 心の声」

叫び声 届かない わたしのこころ うたわない うたわない



人に会ったね。わたしたち。

心の声は届かない。聴いてはきいては届かない、きみの声。


わたしはここで何をしているんでしょうか?「病室さ ここは。」彼は答える。


独房の中で眠る その時きみの灯をともす。こころのなかで きこえる、きこえる

「私?」呼んだ? 声の主は彼ではなかった。もはやわたしはここにはいなかった。独房に監禁されてから、3年どころか、3週間も経っていなかったのだ。病名は【不明】。医者はいちおう診察はしてくれた。


面と向かって話すのは気が引けた。医者の名はジョージ・オーウェル。

アメリカ人だが、カナダに住んでいて、わたしの知る有名な作者と同じ名前だった。

その本は読んだことがないが、私の弟は、中学校の授業の一環で読まされた。

戦争のあったころ、わたしの友達と、父の名は、隠された。なぜならHISという中華系組織にさらわれて、トレーニングを受けさせられて、止まらない時間。


もう遅い。その子はさらわれた。犯された。愛情と子ども。僕の声。僕たちの声。詩になりたい、なれない。ならない。死んだ花から洩れるひそひそ声。わたしのこころ、ついてけない


そして、二次戦争の際に、わたしのことば、花ひらく


そして きみは、横たわりつづけた。わたしの花 ひらひらと 散る



終 そして終わりがやってくる 終

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