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  • 透明な辞書を編むへの応援コメント

     『透明な辞書を編む』のタイトル通りに、放課後の教室を描く最初の一段落に詰め込まれた情景描写の美しさと繊細さに息が飲まれました。

     主人公の「私」の独特な感性が伝わってくる、手垢のついていない表現の数々に、本当に「綺麗だ」と思いました。

     最初、一人称が私だったので女性かと思いましたが、雪絵との会話を通じて「初恋」にふれる前の純度の高い感性を持っている十歳程度の少年であれば、僕や俺よりも私の方が似合う、と説得感が増しました。

     私を通してみる雪絵の美しさや二人の間で編まれていく言葉の数々もまさしく「辞書を編む」というタイトル通りです。

     何気ない日常の一コマであるのに、ここだけが特別で違いのある空間なのだ、と行間から伝わってきました。

     最後に過去を回想していることで、大人になった「私」だった、という種明かしも素晴らしいです。

     最後に、まだ雪絵と私は「予約」状態なのだろうか? と思いました。
     「別れの挨拶」と国語の辞書に載っていると私が考え、二人で編んでいった「さようなら」の意味が、まだそうだったらいい、と思いました。

     読後感も良く、純粋な光がまだ透明に輝いているようです。