海に浮かぶ月
もふもふ
第1話
今よりも、ずっとずっと遠くの未来の地球のおはなし
海で、一体のくらげさんがぷかぷかと浮いていました
最近、何だか暑いなぁ、と考えながら腕を組みます
見事に腕が絡まり困惑するくらげさん
それを見掛けた他のくらげさんが近寄ってきます
「やぁやぁ、大丈夫かい?」
「うわーん、たすけてー」
やってきたくらげさんは、一生懸命絡まった腕をほどこうとしますが、とうとう自分も絡まってしまいました
どうしようも無くなった二体はとうとう泣き出してしまいます
そしてどちらともなく、くらげが言いました
「もう、合体するしかない」
くらげには、絡まってほどけなくなったら合体して一つのくらげになり、同時にくらげ力(くらげぢから)がアップするという生態があることは広く知られています
しかし、くらげ力がアップする代償として理性を無くし凶暴化するという事実はあまり知られていません
くらげも知りません
そして合体を果たしたくらげはサイズも態度もとてもデカくなり、まるで成長期のヤンチャな男子中学生です
他のくらげよりも自分は強い
そう確信しながらすれ違いざまに肩をわざとぶつけ、絡んで合体、吸収していきます
そのような行為を何度も繰り返し、どんどんくらげは強大になっていきました
もはやアウトローくらげです
海を仕切る組織の一つ、指定暴力団白鯨組組長ニタリクジラが重い腰を上げ、ヤンチャしている若造にお灸を据えてやろうとニタリと笑みを浮かべ、くらげのカチコミにあって絶命しました
最期まで素敵な笑みを絶やさなかったそうです
その後も神聖サメ王国や暗殺ギルドシャチファミリーなどがくらげを止めようとしましたが、もはや誰も太刀打ちできません
海は荒れ果て、敵はいなくなり、それでも暴力を求める狂ったくらげは陸を目指します
そしてとうとう上陸したくらげ
しかし、タイミングが悪かった
くらげは突然のたうち回り、苦しみ始めます
「アア!!熱イ!!暑イ!!」
そう、この日は令和8年8月8日、イカれた猛暑日で最高気温47度の真っ昼間でした
ジリジリと太陽光に焼かれ、動くことも出来ずに身体中の水分が蒸発していきます
どんどん身体は小さくなっていき、気付けば昔のような、ちっぽけな姿になってしまいました
(ぼくはどうしてこうなってしまったんだろう……)
(ぼくが水族館で暮らしてたらこんなことにはならなかったのかな……)
水族館の職員さんは、業務の一つとして絡まったくらげを日夜ほどいている
いわば、彼らは未然に世界の危機を救っていると言っても過言では無いだろう
そんな日常の積み重ねこそが、昨今の平和を維持する事に繋がる、わたしはそう信じたい
海に浮かぶ月 もふもふ @mohumohuuuu
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