日常

骨皮骨子

ピンクベージュ



「そういえばさ、ピンクベージュの帽子を被った人、餅つきに来てなかった?」と裏のお寺の餅つきから帰って一休みしてる娘に聞いたんですよ。


その日、娘は友達と家の裏のお寺でやった餅つきに出かけて「楽しかった」と帰ってきて。

お寺でお餅を頂いて帰ってきてるから、あまり昼ご飯は食べないだろうとカップ焼きそばを用意して食べさせて。

その後、家にあるゴミ箱のゴミがいっぱいになったので駐車場にある大きなゴミ箱に移動させようと、外に出るとお寺の裏庭にピンクベージュの帽子を被った女性がこちらを見ているんです。

「餅つきの片付けでもしているのかな?」と思いながら駐車場に向かい、戻ってくるとまだこちらを見てて。

普通は“目が合ったら”会釈とかするじゃないですか?

見ての通り私、目が悪くて。

その度数に合わると日常生活をするのに疲れちゃうんで少し度を落としてあるんです。だから、少し遠くが見えにくいんですけど “顔” は認識出来ます。


ただね...その女性は帽子、髪の毛、服は認識出来るが“顔”が認識出来ない。“目”が合わないんですよ。


なんて言うか...のっぺりしたピンクベージュが立ってるんですよ...


そう、一気に話して冷めてしまったコーヒーに口をつけた。

横に置いてあるスマホをチラッと見ると「あっ!もうこんな時間。子供達が帰ってくるので」と言いながら立ち上がり「お釣りは要らないので」と千円札を机に置いた。


「いや、いいですよ。ここは...」の言葉に被せるように


「私、娘にいるか聞いたじゃないですか?」


「えぇ、確か初めの方に」


「そんな人はいないって」


そう言って主婦のAさんは、慌てて出て行ってしまった。

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