第2話 お礼は美味しいもの

 今日は、キトラの冒険者ギルドに来ています。シリウス様に頼まれて、魔獣から取れるクズ石を買い取りに来ました。

 シリウス様は、役に立たなかった魔獣から出るクズ石を、魔石にする方法を見つけた方で、レオ二ード様とのご結婚の際に王宮魔法師団を辞めました。

 物凄く引き留められたそうですよ。

 

 ギルドにはいると、受付のナナさんがいた。少しくせっ毛の猫の獣人さんで、仕事の出来る女です。

「メアリー、こっち」

「ナナさん。こんにちは。シリウス様のおつかいできました」

「クズ石よね」

 ナナさんは、カウンターに小さな袋を2つ置いた。

「今日のは、銀貨5枚よ」

 私はカウンターに銀貨5枚置いた。

「ありがとうございます。書類にサインをお願いします」

 私は書類にサインして、クズ石を受け取った。

「ありがとうございます」

 お礼を言って、孤児院に行きます。

 このままだと汚くて、使えないから、孤児院の子供達に洗って貰い、色別に分けてもらいます。

 もちろんバイト代は払います。

 ご主人様方は、孤児院の子供達に勉強させ、仕事を与えて、将来困らないようにしているのです。勉強したい人は、誰でも来ていい事になっているので、キトラでは、識字率が上がり、計算出来る方が増えて、騙される方が減りました。

 子供達も、就職するのに幅が広がって、無理に冒険者になる子供が減ったのはいい事ですよね。

 ちゃんと寄付もしています。

 このクズ石は加工して、魔石にしています。それを売ると、かなりのお金になりますので、ちゃんと利益も出ているのです。

「皆おはようございます」

 私が行くと、子供達は笑顔で迎えてくれる。

「メアリーさん。おはようございます」

 中から、シスターのルルさんが出てくる。もう五十代なのに見た目は、若いですよ。こんな風に年を重ねたいものです。

「ルルさん。おはようございます。石の選別は終わっていますか?」

「えぇ、もちろんよ。仕事をくださる領主様方に、お礼を伝えておいてください」

 小さい袋を5袋受け取り、頷いた。

「はい。かしこまりました」 


「メアリー、お帰りなさい」

 屋敷に戻ると、なんとシリウス様がお出迎え。

「シリウス様。体調は大丈夫ですか?」

「大丈夫。それより、石はどうだった?」

「ちゃんとギルドに行って、孤児院にも行って来ました。シスタールルが、お礼を言っていましたよ」

 シリウス様に石を渡すとシリウス様が笑顔になった。

 今日も麗しいです。

「ありがとうメアリー。これ、お礼」

 そう言って、私にチョコレートをくれました。

「ありがとうございます。今食べていいですか?」

「いいよ」

 私は、包みを開けて、口に入れました。

 口の中でじわっと溶けて、甘くて、花のような香りがしました。

「これが、幸せの味…」

「大げさじゃない?」 

「そんな事ありません。チョコレートはもとから美味しいものですが、今日のはシリウス様からのご褒美という、価値がプラスされているのです。

 このチョコレートは、今、世界一美味しいチョコレートです!」

 私が箱を掲げて力説すると、シリウス様はクスクス笑う。さらりと薄茶色の髪が揺れる。私の髪はオレンジ色で少し固いから、羨ましいです。

「ご馳走様でした」

「また、よろしくね」

「はい!」

 残りのチョコレートは、部屋に持って行って、大切に食べます。

 チョコレートは、他のお菓子と比べて、高いですから。

 どれくらい高いかというと、クッキーが5枚で銅貨1枚。

 チョコレートはクッキーと同じ大きさのチョコレートが1枚で、銅貨1枚なのです。

 高いですよね。今、シリウス様がくださったチョコレートは、箱に入っていて、包まれていましたから、たぶんプレゼント用で、店によっては銀貨1枚です。

 鉄貨10枚で銅貨1枚。

 銅貨10枚で銀貨1枚。

 銀貨10枚で金貨1枚。

 金貨10枚で大金貨1枚。

 大金貨10枚で白金貨1枚。

 白金貨、大金貨は、普通に生きていると見ることはありません。

 一般人は、四人家族が金貨2枚くらいで暮らせますから。

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