3・僧侶VS侍

「ほっ」


 俺は、学院内での決闘の場として決まっている、中庭で。

 戦闘機能的にも十分動きやすく作られているこの学院の制服を着て、ロングメイスを棒術士ぼうじゅつしのように振り回して構え、戦闘態勢せんとうたいせいをとる。


「そんな鉄の棒一本で……。侍の刀術に立ち向かえると思っているのが哀れだな」


 セルフィナは、先ほど鞘から抜いた刀を鞘に戻していて。腰を落として、いつでも抜刀ばっとうに移れる姿勢しせい観衆かんしゅう結構けっこう多い。生徒会長の本気が見れるというのと、学院内での悪評あくひょうが高い俺が死ぬところが見たいという奴らが多いんだろう。


「ま、試してみな。俺がそう簡単に死ぬようなタマかをな」


 俺はにやにや笑ってセルフィナにそういうが。

 無表情むひょうじょう

 セルフィナは全くの無表情だった。

 こいつ、感情のスイッチのオンオフができるのか?

 それとも。


 極度きょくどに集中しているのか?

 とかおもっていると!


 瞬足しゅんそくの踏み込みで、セルフィナが突っ込んできた! これは!

 居合切いあいぎりだ!


 ものすごいスピードで横薙よこなぎに刀が走る。

 だが、俺はロングメイスを縦に構えて、それを喰いとめた。


「ちっ! 僧侶ごときが生意気な!!」


 舌打ちをするセルフィナ。生意気って言われたってお前よ。

 あんなもん、止めなかったら俺の体両断りょうだんされてるじゃねえか。

 それくらいにヤバい居合切りだった。


「ふん。残念だったな、聖なる侍さんよ。んじゃ、今度はこっちから行かせてもらうぜ」


 俺はそういうと、ロングメイスで棒術を使い始めた。このロングメイスは、俺のオーダーメイドの品で、長さは二メートルきっかりある。リーチという点では相当なものがある代物しろものだ。


「くっ! このっ!!」


 その攻撃に押されたセルフィナが叫ぶ。


 俺を僧侶なので非戦闘員ひせんとういんとみなす奴らもいるが、そこのところのカバーを自分にさないほどのバカではないのだ、俺も。

 幼いころから有名な棒術士に付き、刃物はものによる戦闘せんとう信仰上禁止しんこうじょうきんしされている僧侶の物理的戦闘力ぶつりてきせんとうりょくを補うための棒術を磨いていたというわけだ。

 その棒術によって、頭に強烈な一撃を貰ったセルフィナが、怒りの表情をあらわにする。というか、頭皮とうひが割れてひたいに血が流れている。


「……あのよー。お前も女の子なんだろ? しかも、美人の。少しは容貌ようぼうとか気にしろよ? さっきの俺の一撃で頭皮割れてるぞ? 髪の毛セットするときにイテェぜそれ?」


 俺がそう言うと。

 セルフィナは、なぜか顔を赤くした。


「……そう言うのならば。お前が停戦交渉ていせんこうしょうをしてきて、私が受け入れたという形で。一時、この決闘は収めよう」


 ……俺、なんか。

 こいつとどこかで昔会ってるのか?

 女の感情に対する嗅覚きゅうかくするどい俺としては、どうにもこの女の反応が、そんな匂いを放っているような気がしてしょうがなかった。

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