きせる
あじゅが
キセル
こちらを覗くなと言われたわたしは、すすり泣くように
「誰が皆を束ねるのですか、誰が語りをなさるのですか」
大丈夫だ、と音の乗らない
そして。
姉様は
鉄のようなその手に触れてキセルを持つと、
して
キセルを離したその腕が、大きく
部屋がぬくもりを消していく。
冷たい
ああ、。
それから
わたしは、おなじ部屋の
あれから何十年が経ったでしょうか。商人を通じて蘭学の蘭方医学と測量術を学んだわたしは、女ながら教えに発つことになりました。
「病状のたより...」
考えるより先に、机の
そのしなやかな線と
今なら姉様の後ろを、その格に怖気ず、もう一歩近くで歩ける気がしてくるのです。
もうわたしの方が歳をとってしまいましたが、姉様にはまったく敵わない。
しかしこれでわたしも一人前だと、ふかすだけのキセルを指に乗せました。かつての姉様がそうしていたように。
「人を束ねてものを語る」と、その背中を追いかけて久遠の時を過ごしたその誇りを胸に、最後の
キセルはいまも、箱の中。
わたしのなかに、もうキセルはありません。
ある冬の日、雑踏のほんの
その切れ長の目尻でいつしかの
きせる あじゅが @ajuga_reptans
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