ようこそいらっしゃいました。主人公を決める御遊び(デスゲーム)へ。
夜嵐 海莱
第1話:ようこそいらっしゃいました。
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この場にいらっしゃったこと、誠に感謝いたします。今回、あなた方全員で主人公1人を決める御遊びをしていただきます。
ルールは唯一つ、自分が安全圏だと思わないこと。以上です。
さあ!始まります。
第一回主人公選定の儀、開幕です。
目を覚ますと、そんな言葉と共にモニターの画面が妙な柄のトランプカードに変わった。番号はXIII。この番号が何を意味しているのかも、そもそもこの場所は何かも全く理解ができなかった。
ここに来る前、今まで自分が何をしていたかもどうやってここに来たのかも全て不明。ふと目が覚めたら、いや意識を取り戻すとここに存在していたのだ。
「一体何がどうなって……そもそもここはなんなんだ……?」
何かを考えていても解答は何処からも出てきはしなかった。そのため呆然としている脳の意識を覚醒させる為、周囲を見渡した。
黒と紫のダイヤ模様で飾られた部屋、XIIIと描かれた随分な高貴さを醸し出していた木製のドア、先ほど主催者らしき人物が話していたモニター。その横に妙な機械。
そしてこの俺。名前は─────。
「聖譲
服のポケットを弄ると、部屋の雰囲気と一致した証明書のようなトランプカードが出てき、そこには俺の名前らしきものと写真と生年月日。それ以外のプロフィールの欄もあったが、何も記載されておらず、空白だった。
「なかなか……イケメンだな、俺。いやそんな事はどうでも良い。一先ず部屋を出るか……の前に、なんだこの機械。」
不快に存在感を放つ妙な機械にはカードを差し込める穴が空いていた。恐らくここに自分のカードを差し込むのだろう。興味本位でそこに挿入した。その瞬間、それは金紫のような光を放ち、軽快な感じの音、例えるならガチャを引いたらSSRが出てきた、そのような音共にカードが光に包まれていった。
光が止んだ後、カードを引き取り何か変化がないか観察をすると、空白だった一つの欄に、新たに言葉が生まれていた。
「能力、起死回生……?なんだこれ。説明は……ないな。なんかまぁ凄い物なんだろう。少しだけ嬉しいな。」
ほんの少し高揚した気分を鎮め、これから起こる事に気を引き締めた。
この部屋にもう用事は無さそうだった為、ようやくドアを押し部屋を出ようとした──────────。
しかしこのドアは引き戸だった。何故だか気分が落ち込んだ。
部屋を出ると、随分と広く、観た者を錯倒させる傾圧があった。だが豪奢な家具は俺を歓迎するかの様に圧を出さずに優しくそこに存在していた。ただ俺がそう感じてしまっただけなのかもしれないが。
そして、この直径二十メートルの円形空間の中央に、それよりも静かな円卓が鎮座していた。席は合計で13席。俺が最後だった。
もう既に12人集まっており、様々な髪色の男女共に13の半数ずつ座っていた。
そのような観察をしていると、13番目の席の右隣に座っている銀髪の女性が横顔を向けて話しかけてきた。
「初めまして。私はヨラン・イグハヴァール。これからよろしく頼む。」
その姿はまるで、雪の絶望さを纏い、なお希望を放ち続ける眩い月光。どんなに暗くても道標となる光。どれだけ壊れかけようとも絶対に折れず、煌めき続ける正義。そのような言葉が相応しい容貌をしていた。
銀色に輝く髪。その髪で隠されているはずの瞳は黄金によって尚も存在を放ち続けている。烏滸がましくも椅子で素直で厳格さを醸し出している後ろ髪が隠されているが、それでもその輝きは艶やかで美しく、高貴であった。
「ん、俺は聖譲 朔斗。よろしく。」
眩しすぎて彼女を直視できず、一瞥だけしてさっさと椅子に座った。
すると、次は左隣の金髪の女性が話しかけてきた。
「聖譲 朔斗さん、初めまして。私はクリスレア=ノーラ=ファイスと申します。よろしくお願いいたします。」
「カロリー高過ぎ。こんなん死ぬだろ。」
急に喉が渇き初め、体の熱が手先足先に集中していく。その異様な状態を紛らわすため、時計に視線をずらし、秒針を見つめた。
彼女は聖騎士、この言葉が完璧であろう。聖を体現した様なその姿は、見たものを呆然とさせ、穢れを洗い流し静粛させる厳格さがあり、手を伸ばして縋りたくなる。または後を追いたくなるそのような気高さと雄々しさを持っていた。
そして何より、誰よりも眩しかった。
爽やかな金の髪は雄然とそこに存在しており、その前髪は彼女の藍色に瞬く
「どうしました?顔が赤い様ですが。」
「気にしないでくれ。カロリーを消費したからお腹が空いてきた……間違った。あなた達の顔があまりに……いや、とにかく何でも無いから。」
彼女はその細く、厭らしい首を傾け、困惑していた。
そしてようやく、物語が始まった。
「ようこそ皆様!この場にお集まりいただいた事に感謝を。
さて、お待たせいたました。主役が全員集まったようですので、第一回主人公選定の儀を開幕いたします!!」
髪は後ろに上げ、目元にはドミノマスクを付けている俺より一回り背が高い不気味な男が、いつのまにか俺の真後ろに立っていた。
「絶対的ルールは皆様の先ほどの部屋でご確認されたでしょうが、細かなルールも当然存在します。が、その説明の前に一人一人自己紹介をお願いいたします。ではカードNo.Iの方から。」
その男は、一人一人の顔を吟味するように覗きながら円卓を歩き回りながら話していた。
だが、男の言うことに対して誰も反応することはなく、次はヨランが静かに話し始めた。
「お前の目的はなんだ。ここに連れてきた理由は。この遊戯に何の意味が。我々に何をさせたいのか。全ての訳を説明して貰おう。」
「それもしっかりとご説明させていただきますます。ですからその前に皆様に自己紹介をしていただきたいのです。」
男は口を三日月の様に広げ、卑しく笑みを浮かべていた。その姿に嫌悪しているのか、ヨランは顔を顰めながら自己紹介をし始めた。
「初めまして。私はヨラン・イグハヴァール。呼び名は何でも良い。」
端的に済ませ、目を瞑り腕を組みながらさっさと座ってしまった。
そして今気づいたが、どうやら彼女がカードNo.Iのようだった。何故だかクリスレアの方が眩しく、No.Iに見えたのだ。
そんな事を考えていると、次の人物が立ち自己紹介を始めた。
「皆さんどうも初めまして。僕はレイン・アーヴァルドロッデ。以後お見知り置きを。」
端正な顔つきの髪も瞳も真っ白な少年は、左腕を背中に、右腕を胸に当て、儀礼的な所作を魅せた。
声色は透き通る様に優しく、妖精の囁きかと考えてしまう程に綺麗であった。
「あー次あたしか。
黄銅の髪をし、遠目からでも分かる程に柔らかそうな髪を後ろで束ねた俗世的な装いをした切れ目の少女は、何故だか『ペット』の言い方が妙であったが、俺以外誰も気にしてはいなさそうだった。
「次は俺か!俺は
赤髪赤目の少年は、まさに王道主人公と言っても差し支えないぐらいに真っ直ぐであった。これから何が起こるのかは分からないが、彼であれば全て万事解決する。そのような期待感を持たせてくれる人物であった。
「わ、わたしですよね……。名前は
緑髪で目が隠れている細い少女は、俯きながら話していた。一見ひ弱に見えるが、佇まいからはそんなことを感じさせない力強さがあった。その強さは何か絶対の自信があるのだろう。
「チッ……めンどくせェなぁ。俺はローガ・ドーガン。強い奴がいるンってェなら俺の元に来い。闘って叩きのめしてやる。」
円卓に足を両足を上げて組み、首に手を当てて俺たちを見下すような格好をしながら、水色の髪とそれに反する捕色の真紅の瞳を持った少年が堂々としていた。
「僕はカリア・レーベルト。カリアと呼んで欲しい。趣味は動物や植物に触れること。もしあの子達の事で聞きたいことがあれば是非僕に尋ねて。何でも答えられるから。」
落ち着いた声色の筈なのに、そこに色気を感じた。吐息が多めという理由もあるかもしれないが、間違いなくそれだけではない。あの声を聴けば、人間はもちろん動物も植物達も、素直になって、傾聴してしまうのだろう。
そんな空色で透き通った髪と翠色の瞳を持った彼女は、そのまま静かに座った。
「僕は
恋愛小説の主人公の様な黒髪の黒目の少年は、あまりパッとした雰囲気がなかったが、それでも確かに存在感はあった。根が優しいのだろう、それが彼の目にハッキリと顕ていた。
「次は私ね、名前は
自己紹介は簡潔に、早く。探偵の様な風貌をしている黒髪ロングで赤い瞳をした彼女はすぐに座った。だが、それは理由なく終わらせた訳ではない。何故なら座った途端、何かメモを取り始めたからだ。指先がインクで汚れているのをみると、どうやら前から何かを書き留めていたらしい。好きなことは推理と言っていた事から、俺たちのプロフィールを聴き、観察して書いているのだろう。
「……あ、次俺?ん……まぁ、名前は
自己紹介の間は怠そうに顔を上げ、終わったらすぐにまた
しかし、仕草は倦怠人のそれだが、目だけは違った。あの目は仕事人のそれだ。為すべき事があるのなら、迅速にそれを為すのだろう。
彼は、間違いなく強者だ。
「ようやく俺の出番か、待ち侘びだぞ!皆よ!我が名はアリウス・マークフィルド!この場で君達と出逢えたことに心からの感謝を!そして何より、俺がいるのだから一切
これからの幕は、絶佳なものになるだろう。皆で、華を綴ろうじゃないか!!」
熱さを感じさせる金髪に、蒼い瞳を輝せる少年は、まるでこの場を歌劇場とし演説していた。彼の騎士のような風貌、両手を広げ魅せる姿。そして何より芯が入り、真に話しているのだから完全に聴き入ってしまった。
正義の体現者。主人公。彼はあまりに純粋だったのだ。
「初めまして皆さん。私はクリスレア=ノーラ=ファイスと申します。私も、皆さんと出逢えた事に感謝を。これからの遊戯に幸が在らんことを。」
彼女もまた、穢れ無き聖少女であった。先ほど彼女に対し眩しいと感じたのはこの事なのだろう。完全に叙事詩の主人公であろう。その姿の背後にはどの様な苦難があるのか、もしくは何も無いのか。気になってしょうがなかった。
そして、遂に俺の出番になってしまったのでのそりと席を立った。
「俺は聖譲 朔斗。趣味は読書。……残念ながら俺にはあなた達の様な強さは何もない。だけどそれでもこの場で出会えた事が嬉しい。これからよろしく頼む。」
本心であった。俺とは全く違う人種。しかも一人一人が見事に被らずにその物語の主役と化していた。そんなまぐれはこの世を探してもここ以外に存在し得ないだろう。だから、皆んなと出会えたこと。この場所を用意してくれた主催者に深く感謝した。
これから起こる事を除けば、だが。
「皆様のご演説、あまりに佳絶でした!私、感動の極みでございます!!!うぅっ!ぐすぅっ!!」
目から大量の涙を流しながら、体を左に大きくくねらせ拍手をしていた。その姿があまりに滑稽で、演技めいていたため思わず吹き出しそうになったが、俺以外誰も反応していなかった。
俺は急に冷静になった。そういう空気だった。
「────さて、では先ほど申し上げました通り、内容とルールの説明をいたします。」
先ほどまで円卓の少し外れた場所で泣いていたのに、いつの間にか円卓の前にある、幕が引かれた劇場に男は深々と辞儀をしながら立っていた。
そしていよいよ、俺たちはこの『御遊び』の参加者であることを自覚させられた。
「これから皆様には、主人公を決める御遊び《デスゲーム》に興じさせていただきます!!」
終幕で始幕の言の葉が、告げられた。
ようこそいらっしゃいました。主人公を決める御遊び(デスゲーム)へ。 夜嵐 海莱 @elliotnoir156
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