君と奏でたいIII

平本文

第1話

「新入部員の白崎みちるです。担当はフルートです。よろしくお願いします」

「おおっ、フルートですか! ヴァイオリンと相性がよさそうですね」

文化祭が無事に終わり、ゆずたちは三年生となった。

新入部員がやってきて、室内楽部はますます盛り上がると思ったのだが――。

「みちるちゃん、もっと練習してきてくれない? これじゃあ困るわ。音も全然出てないし、フルート歴は何年なの?」

「3年」

「ええっ、3年で音が出ないの? そりゃ重症だ……」頭を抱えるゆず。

「だって、わたしたちもう三年生なのよ。受験があるじゃない」

「じゃあみちるちゃんはどうしてクラブに入ったの?」

「……楽しそうだと思ったから。でも練習は嫌い」

「練習しないと上手にならないし、演奏会もできないわよ」と、さき。

「……」黙り込む六人。

「ちょっと、部活をいったんお休みさせていただけないかしら。フルートも上手になりたいし、勉強も頑張りたいの。どちらか選べない」

「……わかったわ。やりたくなったら、いつでもきてください」

ゆずが言った。こうしてみちるは、いったん室内楽部を去ることとなった。


「そういえばみんなは進路はどうするの?」と、ゆず。

「ぼくは音楽療法士。めぐみ支援学校で演奏した時、なりたいと思った」と、雪。

「ぼくとかほは音大」

「わたしは普通の大学。楽器は高校でやめるつもり」と、さき。

「わたしは……」

ゆずは悩んでいた。

音楽はもちろん大好きだ。

でも、音大に行くほどではないし、普通の大学にも興味がある。

いったいどうしたらいいのだろう。



「あの、わたしやっぱり音楽がやりたくて……」

みちるが再び部室を訪れたのは一週間後。

おずおずと少し緊張気味だ。

「大歓迎だよ! でもそのレベルじゃあ演奏会には出れないから、望先輩の知り合いとかに特訓してもらわなくちゃいけないですね!!」

嬉しそうなゆず。

みちるはフルートが好きだがなかなか吹けないでいた。

そこで思いついたのが望先輩のフルート専攻の大学生の特訓だ。

「宜しくお願いします!!」

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君と奏でたいIII 平本文 @aya19880109

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