ムチンの潮汐
晴れ時々雨
第1話
恋人と放置プレイを楽しんでいる期間中、変なものを拾って持ち帰ってしまった。体中がわかめのようにヌルヌルに濡れている男の子だった。いくら拭いてもぬめりが取れない。せめて家に持ち帰るものは綺麗であってほしかったけど諦めよう。私よりずっと背の高い男の子は何も喋らない。
彼氏とはしばらく逢わない。もしかしたらこの子も、全身がわかめ化するくらい長期間の壮大な放置プレイ中なのかもしれない。そしたら私、余計なことをしでかしたのかしら。長時間の放置ときくと、まず黴とかきのことか菌類を想像するけどこの子は海藻類なのだ。私の体が全体に白味を帯びているのは、菌の足が張り巡らされつつあるせいだと思っていた。そのうちきのこが生えるよ、と彼氏が言う声が聞こえるようだ。そしてきのこだらけになった私を、プレイ解禁になった暁に食べてしまう。
でも今度は違う。次はわかめが添えてあるわよ。ヘルシー。きっと彼は丸ごと美味しくいただくのでしょうね。そんな貪欲さがある。久しぶりに出会った彼が私に突き立てる歯の痛みと甘さから感じる痺れを想像して切なくなる。今度はわかめ君にも同じことをするから、そうされている彼と、している彼の両方をみながら私は達するのだろう。それはなんて後暗くて甘美。やっぱり拾ってきて正解だったね。けれど、彼はこの子を殺すと思う。考えるとちょっと気分が沈むから、きっとこっちが現実なのだろう。もう少し生きていようね。私は彼のぬめる体を上手に抱きしめる。
ムチンの潮汐 晴れ時々雨 @rio11ruiagent
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