そうか、社会は身体で、私たちは個々が棘を持つ花なのかと納得しました。いい感性ですよね。
語りが魅力的です。最後まで何者かわからぬ棘を抱えた未知なるものが、浜でうち捨てられた腐る前の体と願いを見つけ、その棘でそっと触れて掬い上げてくれるお話です。救いですが、悲劇の始まりのような予感がしてとても詩的な物語でした。
最初から最後まで、ぬるっとした感触がまとわりつくお話です。語り手が何者なのかは最後まで曖昧なままで、読む側も足場の定まらない不確かさの中に置かれます。音や匂い、触感を中心に描かれる文体は、出来事そのものよりも「願いが消費される瞬間」に焦点を当てていて、不思議な静けさと残酷さが同居しています。誰かを救ったのか、それとも奪ったのか。その判断を読者に委ねたまま、物語は日常へと帰着します。あまりに自然な帰り方だからこそ、読み終えたあとに違和感がじわじわと広がる一編です。