第6話

 おもらしをして屋敷に逃げ帰ったお嬢様は、濡れたドレスのまま自室で床に蹲り、泣き崩れていました。

 私は傍らに膝をつき、声をかけました。


「お嬢様、大丈夫です。アルフレッド様は、自分の配慮が足りなかったと悔いていらっしゃいました。あのお方は誰にも言いません。シャーロット様に夢中ですから。きっと素敵なご夫婦になれますよ」


 頼まれた伝言を伝えると、お嬢様は顔を上げて私を睨みつけました。


「……バカ!」

「はい、その通りです。申し訳ございません。恥をかかせてしまい……」

「違うわよ! 恥ずかしくて泣いてるわけじゃないの。私、やっぱり結婚なんてしたくない!」


 お嬢様は、幼い子供みたいにワガママを言います。


「アルフレッド様は、お気に召さなかったですか?」

「相手の問題じゃないわ。……私、今日は寂しかった。あなたと馬車に乗れないなんて」


 私だって、同じ気持ちでした。

 お嬢様もそう思っていてくださったなんて、身に余る光栄です。ですが、私にはその気持ちだけで十分です。


「お嬢様。そろそろご結婚されて、私から離れていただかなければならない年齢ですよ。もしかして、おねしょが不安ですか? お医者様を探しましょうか?」


 お嬢様は、あきれ顔で私を見返しました。


「あなたねえ、私がいまだに本当におねしょしてると思ってたの? 十六にもなっておねしょなんかしないわよ。わざとに決まってるじゃない」

「ええっ、そんな、どうして……」


 言いながら私は、お嬢様が小さい頃のことを思い出していました。お嬢様は、嫌なことがあると、わざとおもらしをしてわがままを通し、私を困らせたものでした。


「まさか、今日のおもらしも結婚を断るためにわざとされたんですか?」

「それは、ちょっと漏れちゃっただけ……。でも、どうせ断るつもりだったからちょうど良かったの」


 今日のおもらしはちょっとという量ではなく、二回分以上あった気がしますが、わざとではなかったようです。それはそれで問題ですが、今は置いておきましょう。


「では、なぜわざとおねしょなど」

「……触って欲しかったから」

「え…………」

「毎朝おむつの中におしっこを漏らしながら、あなたが来るのを待ってた。拭いて、触って、気持ちよくして欲しくて……」

「そんな……」


 おむつの処理は、私たちの密かな楽しみでした。布で拭くとき、身体に伝わる感覚を、お嬢様も気に入っているのはわかっていましたが、まさかそのためにわざとおねしょをしていたとは思いませんでした。


 ですが、言われてみれば、昼間あんなにおしっこを我慢しているのに、夜だけおもらしし放題というのもおかしな話です。私の知らぬ間におねしょを克服されていたとしてもおかしくありません。


「知っているのよ。あなただって、私に触れるのを楽しんでいたでしょう?」


 私はごくりと息を呑みました。

 私たちのしていることは、あくまでおむつの処理。偶然に気持ちよくなってしまっても、互いに口には出さないのが暗黙の了解だったはず。認めてしまっては、終わりなのです。


「ねえ、早く拭いてちょうだい」


 お嬢様は膝立ちになると、ドレスの裾を捲り上げ、ドロワーズをずり下げてつるつるの割れ目を露出しました。


「は、は…い……」


 これは、あくまで仕事です。

 自分に言い聞かせながらおしっこを拭き取ろうと割れ目に布を添わせると、お嬢様はあられもなく声をあげ、身をくねらせました。


「あっ、ぁ、ああんっ……♡」


 お嬢様は、体裁など脱ぎ捨ててしまったようでした。私の手をぎゅっと握って言います。


「ねえ。直接触って欲しい。ずっとずっと、触って欲しかった」

「い、いけません。お嬢様」


 そんなことをしては、私はこの仕事をクビになってしまいます。

 お嬢様のお側にいるためには、あくまで使用人としての立場を守らなくてはいけません。

 お嬢様が結婚されても、ずっと道具として振る舞う覚悟を決めていたというのに。


 お嬢様は、指先で私の股間をそっと撫でました。未熟な私の下半身は、ガチガチに硬くそそり勃って、服の上からでもくっきりと形がわかるほどになっていました。


「これは、私の尿筒なのでしょう。私に使わせてちょうだい」


 お嬢様の道具といえど、美しい肌を目の当たりにして、何とも思わないわけではありません。ですが、淑女の生理現象を処理する私たちの、男の生理現象を見逃すのが情けというものではないですか。


「こ、困ります……」


 私は、震える声を絞り出すように言いました。

 お嬢様は、聞こえなかったかのように屈みこみ、私のベルトを外して抜き取りました。


「お、お嬢様……。目が汚れてしまいますから……」

「私ばかり恥ずかしいところを見られていて、ずるいわ。昔は見せてくれたじゃない」

「昔と今では違います」

「言うことを聞いてくれないなら、私また、わざと人前でおしっこをしてやるから」

「そんな、困ります」


 お嬢様はとうとう私のズボンの前を寛げられました。迷いなく下着がずり下げられて、私の陰茎はぶるんと勢いよく飛び出しました。


「きゃっ……」


 お嬢様はお嬢様は口元を押さえて、小さな声をあげました。

 私の陰茎は昔見せたときとは違って赤黒く、血管が浮くほど勃起してびくびくと脈打っています。


「すごい……♡」


 お嬢様は引き寄せられるように手を伸ばして、そこに触れました。


「ああっ……!」


 お嬢様の細い指に触れられている。

 視覚だけでも達してしまいそうな刺激が、私の目に飛び込んできました。先走りがとろりと零れ、お嬢様の指を濡らしてしまいます。


「あ、そ、それ以上は……、お許しください……」

「この子は喜んでいるみたいだけど?」


 お嬢様は、自分の指の動きに合わせて私の陰茎がびくんびくんと跳ね回るのを面白がって、手を動かし続けます。私は後ろ手をついて仰け反り、ただ耐えていましたが、もう限界でした。


「うぁ、う、うぅぅッ……!」


 破裂しそうなほどに膨らんだ陰茎は、びゅくびゅくと精液を吐き出しました。勢いよく飛んだ精液は、お嬢様の顔を汚して、流れ落ちていきます。お嬢様は嬉しそうに頬に手を当てました。


「ねえ、これで私たち、同じ立場だよね。ウィルも私に、えっちなおしっこさせてもらったもんね」

「あ、はぁっ……、どうして、こんなこと……」

「私ね、ウィル以外にここ触られたくないの」


 お嬢様は、私の手を自らの割れ目に引き寄せました。


「今日はね、頑張って他の人とするところ考えたけど、やっぱり無理だった。私、あなたのことが好き……」

「お嬢様……」

「お願い。私のここ、あなたのものにして」


 お嬢様は、私の手を穴の入り口に添えました。

 毎日拭かせていただいてきたそこに、直接触れたのは初めてでした。熱く濡れた感覚が伝わって、私とお嬢様を隔てていたものが溶けていくような気がしました。


 私だって同じ気持ちでした。

 だからこそ、使用人としての距離を保って、ずっと一緒にいたかった。

 でも、もう、どうなってもいい。


「シャーロット様。愛しています。初めて会った日からずっと……」


 お嬢様は大きく破顔して、私にぶつかるように飛びつきました。


「ウィリアム、好き! 好き!」


 普段の慎ましさを忘れてしまったお嬢様は、乱暴に唇を押しつけます。小さな子供のようなキスの合間に、私はそっと舌を割り入れました。


「んんっ……」


 お嬢様は、甘い吐息を漏らしながら、私の舌に必死に吸い付いてきます。だんだんと力が抜けてきたお嬢様のドレスを脱がせ、身体を抱きあげてベッドへと横たえました。


 今朝もしたように、私はお嬢様の両脚を持ち上げて股間がよく見えるようにしました。今まで直視しないようにしていた処女膜のひだが、くぱくぱと私を誘っています。私は顔を埋めて、小さなクリトリスに吸いつきました。


「ひぁああん、っあ、ああぁっ……♡」


 お嬢様は布の上から指で触れていたときとは段違いのかわいい声をあげ、背中を跳ねさせます。丹念に形をなぞりながら舌の位置を下げていくと、私の唾液とお嬢様の愛液が混ざり合って、もうどろどろに濡れていました。


「……挿れてもいいですか?」


 腹につくほど勃起しているものを見せつけるように言うと、お嬢様は息を呑んで頷きました。


「うん。来て……」


 お嬢様は覚悟したように目を閉じました。

 先端が触れると、お嬢様の秘所は吸いつくように私を受け入れました。それだけでも達しそうになるのを堪えながら、私は固く閉じた肉の壁をこじ開けるように少しずつ進んでいきました。


「んっ、んんん〜〜っ……!」


 お嬢様は歯を食いしばり、相当な痛みを我慢しているようでした。


「大丈夫ですか?」

「こんなの、パーティーのおしっこ我慢に比べたらたいしたことないわ」


 私が尋ねると、お嬢様は必死ですました顔を作ります。

 胸の内で愛しさが爆発して、私は衝動のままに奥まで貫きました。


「ああぁぁっ!」


 お嬢様はぎゅっと私にしがみついてきます。


「もう、死んでもいいです……」


 負けじときつく抱き締めると、お嬢様はぽかぽかと私の背中を叩きました。


「ダメよ、私が死ぬまで死んではダメ」

「約束します。シャーロット様……!」


 抱き合っていると体温が馴染んで、お嬢様も落ち着いてきたようでした。

 私は少しずつお嬢様の中を探るように、ゆるゆると腰を動かしていきました。内側を擦るようにしていると、お腹の奥のある部分を掠めたとき、お嬢様の中がきゅんと締まりました。


「あんっ……♡」


 指で気持ちいいところを擦ったときと同じ声でした。


「ここが気持ちいいですか?」

「んっ……♡」


 カリ首で引っ掛けるように刺激していると、お嬢様は身体をくねらせ、どんどん高みへと昇りつめていくようでした。


「あっ、あっ、あ……♡」


 小さな声をあげてお嬢様が達すると、中が締まるのに合わせて、ぴゅっぴゅっとおしっこが霧のように噴き出し、最後にちょろちょろとおもらしをして私の陰茎を熱く濡らしていきました。

 私も、もう限界でした。


「少しだけ、我慢してください……!」


 私は本能のままにお嬢様の子宮をガツガツと突き上げました。


「ああぁぁっ♡ あっ、あん、ウィルぅ……♡」


 堪えきれず絶頂に達し、私は何度も陰茎を収縮させて、どくどくと精液を中に吐き出しました。温かい液体でお嬢様の中が満たされていきます。

 全て出し切って身体を離すと、おしっこと精液、愛液と血液にまみれたお嬢様は、目の毒なくらい煽情的な姿でした。


「……きれいにしましょうね」


 私はいつもの通り、お嬢様を丁寧に拭いていきます。こうしているといつもと同じ行為のようですが、処女膜がなくなっているのを目にした私は、やましいような嬉しいような、複雑な気持ちになりました。


 シーツを取り替えて、きれいな服に着替えたお嬢様と、あらためて抱き合ってベッドに横になりました。

 お嬢様は私の手を握って言いました。


「私、一生結婚なんかしないわ。ずうっと一緒よ、ウィル!」


 ☆☆☆


 しばらく後。


 お嬢様は妹のマーガレット様に全ての財産を譲り、私たちは領地の隅にある小さな別邸をいただいて、二人で暮らすことになりました。


 私たちを隔てるものは、もう何もありません。

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お嬢様の専属おしっこ係として生まれました ももりんご @-mo_om-

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