天使と人間と間違い探し
@twweqte2
第1話 天使様 こんにちわ
空の上には、何があるんだろう。
今の時代、空の上に島や不思議な世界があるなんて、誰も信じちゃいない。
空はただ青くて、そこにあるのは雲と太陽くらいそういうことになっている。
「そんなはずなんだけどな」
山橋 廻(やまはし まわり)は、公園のベンチに寝転びながら、空を見上げていた。
視線の先には、どう見ても“あってはいけないもの”がある。
巨大な大陸。
しかも、空に浮いている。
それが現れたのは、今年の春。
前触れも説明も一切なしで、まるで「最初からそこにありましたけど?」と言わんばかりに、当然の顔をして浮かんでいた。
しかも困ったことに、その大陸は廻の住む桜町の真上をすっぽり覆っているらしい。
なのに、日差しは普通に届くし、気温も春のまま。
影すら落とさないとか、物理法則どこ行った。
「意味わかんねぇ」
当然、そんな異常事態が起これば学校は休校になる。
中学生の本業である「学校」が消えた結果、町は一気に静まり返った。
外を歩いているのは、よほどの物好きか、どうかしてる人だけだ。
つまり――今この公園にいる廻も、その「どうかしてる側」ということになる。
おかげで公園は貸し切り状態。
ベンチで春風を満喫した廻は、次の行動を考えた。
「ブランコ、乗るか」
そう呟いて、ベンチから起き上がる。
さっきまで寝転んでいたせいで少し頭がぼんやりするけど、ブランコで揺られれば目も覚めるだろう。
どうせ、今日も空には大陸が浮かんでいる。
だったら、少しくらい変な一日を楽しんだっていいだろう。
「貴方は、ここで何をしているの?」
突然、背後から声をかけられた。
心臓がびくっと跳ね上がる。
「うわっ」
慌てて振り返ると、そこに立っていたのは一人の女性だった。
年上だよな?
高校生くらいに見えるけど、少なくとも廻の通う学校の制服じゃない。
そもそも、この辺で見た覚えもない。
黒いセーラー服。
どこか古風で、昔、母さんのアルバムで見た写真に写っていた制服に少し似ている気がした。
その女性は、風に揺れるセーラー服の裾を気にも留めず、半分眠たそうな目で廻を見下ろしている。
気怠げで、無愛想。
なのに、不思議と目が離せなかった。
こんな美人に話しかけられたら、男子中学生なんてドキドキが止まらなくなってしまう。
「……それで?」
淡々とした声。
まるで、ここに廻がいること自体が不思議だと言いたげだった。
「んー。春だし、人のいない町を楽しもうかなって。ぶらぶら歩いてたら、気づいたら公園に来てた。まあ、暇人だけどさ。……もしかして、あんたもブランコ乗りに来たの?」
自分でも何を言ってるんだろうと思いながら、廻はそう答えた。
けれど女性は、話を聞いても無愛想な表情を一切崩さない。
まるで、「それで?」と言いたげな顔だ。
(いや、じゃあなんで話しかけてきたんだよ)
年上っぽい女性が、中学生にいきなり声をかけてくる時点でだいぶおかしい。
しかも、無表情。
状況がめちゃくちゃすぎる。
沈黙が落ちた。
春風だけが、気まずさを誤魔化すように公園を吹き抜けていく。
「そんなことを聞いたわけじゃないんだけど」
女性が、ようやく口を開いた。
「もう少し分かりやすく言った方が良かったかな」
一拍、間を置いてから
「貴方は、どんな願いを叶えたの?」
その言葉に、廻の心臓が別の意味で跳ね上がった。
いや、跳ねたというより、一瞬止まった気がする。
どうして、それを知っているんだ。
その疑問に答えるように、女性の背中からガチャン!!と大きな音と共に羽のようなものが生えてきた。
「天使?」
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