展示番号002

最後の留守電  大野由美


昨年の出来事です。

私は亡くなった祖母の家で、遺品の整理をしていました。

すると、固定電話に1件の留守電が入っていることに気づきました。

留守電はどうやら祖母が亡くなった日に入っているようでした。

葬儀を終えて1週間経っていました。

祖母の死を知らない知り合いかもと思い、留守電を再生しました。


「……ザザッ…ザッ………ザッ」


あいにく、雑音がひどく、聞き取ることができませんでした。

それでも、この電話をかけた人が気になり、何度か再生しました。

所々聞こえる声は、どこか祖母の声に似ているような気がします。

そんな訳がないと思いつつも、その声を聞いていると祖母の事がよく思い出せるので、次第に遺品整理も手につかず、留守電を再生し続けました。


何度も再生していると、奇妙なことに気がつきました。

だんだん、再生時間が長くなっている。気がします。

そこから時間を計りながら、何度か再生しました。

それは確信に変わりました。

再生するたびに、ほんのわずかではありますが、再生時間が延びています。

時間にして約3秒ほど再生時間が延びています。


とても気味が悪くなり、もう再生するのをやめようと思いましたが、先程まで再生し終わるとすぐに再生ボタンを押していたため、つい押してしまいました。


「……ザザッ…ザッ………ザッ…」

相変わらず雑音がひどくて聞き取ることはできませんでした。


でも、その再生が終わる直前、


「……もしもし」

と聞こえた気がしました。

怖くなってしまい、もう1度再生して確かめることはできませんでした。

何も聞こえなかったと自分に言い聞かせ、私は遺品整理を再開しました。

もう留守電を再生することもありませんでした。

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怪異収蔵殿 喜多殿 @kidaden

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