8

火曜日の朝、妹は主人公が出勤したあと、家で愛犬と過ごしていた。犬はゆったりと寝そべり、時折尻尾を小さく揺らしている。


そのとき、軽い揺れが床を伝わった。小さな地震だ。妹は思わず立ち上がり、犬を抱き寄せる。「大丈夫……?」

犬はくるりと丸くなり、鼻先で妹の手をそっと押すように触れた。まるで「心配しなくていいよ」と言っているかのようだ。


しかし家の電子鍵が停電で反応せず、ドアは開かない。窓もすべて電子式のロックで閉ざされ、外に出られない。妹は息を呑み、少し震えながらソファに座り込む。犬はその隣にゆっくり体を横たえ、顔を妹の膝に軽く乗せた。


「怖い……なんか閉じ込められちゃったみたい」

妹の声が小さく震える。犬はその瞳をじっと向け、低く唸るわけでもなく、ただ穏やかに尻尾を揺らす。

妹は深呼吸をして、犬の柔らかい体に顔を埋めた。「……ありがとう」


二人はソファで並んで丸まり、犬がそっと妹を包むように体を寄せる。小さな心臓の鼓動が安心感を伝え、妹の呼吸も少しずつ落ち着いていった。外の地震の揺れはすぐに収まり、室内の静けさが戻る。


「大丈夫だね……」妹が小さくつぶやくと、犬は軽く、まるで頷くように目を細めた。


妹はソファに丸くなった犬を優しく撫でながら、思わず笑みをこぼした。犬はその手の動きに合わせて耳をくにゃりと動かし、時折鼻をぺろりと舐める。


「ふふ、ほんとにあなたはおっとりしてるんだから……」

妹が笑うと、犬は尻尾を小さく振って応え、ソファのクッションに前足を伸ばしてのびをする。」

犬はその間、静かに隣で体を丸めたり、時折頭を妹の膝に乗せたりする。外の揺れや停電で少し緊張していた妹の気持ちは、犬の穏やかさで少しずつほぐれていった。


やがて夕方になり、彼女が帰宅する時間が近づいた。犬は立ち上がり、妹の顔をぺろりと舐めて挨拶する。妹は微笑みながら犬の首を軽く抱き寄せる。「ありがとう、一緒にいてくれて」


玄関の電子鍵が復旧し、外のドアが開く音が聞こえる。二人と一匹はその音に少し安心したのだった。

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