小説を書き、書き続ける理由

 最初は、誰かに読まれたいと思って構想していた。でも、考えているうちに小説を書くこと自体が楽しくなって、反応がなくてもいいと思えるようになった。


 読まれなくてもいい。ただ、自分の書きたいものを書いていこう。そう思うがままに筆を走らせた。


 そうして構想する事しばらく、自分の好きを形にすることができた。


 どうせ、誰にも読まれない。カードゲーム小説なんてニッチすぎるし、検索する人もいない。そもそもウェブ小説には面白い作品が山ほどある。


 新参者で知名度も才能もなく、当時はSNSも使っていない。そんな私の小説を見つけて、わざわざ読んでくれる人なんていないだろう。きっと、このまま埋もれる。


 でも、自分が書いたという証が欲しくてウェブに投稿してみた。


 検索で小説の名前を入力すると、表示される自分の小説。


 それが、自分が何かを残せた証みたいで嬉しくなった。達成感も半端なかった。


 そうして自己満足しながら投稿すること三日目。初めてコメントがついた。ポイントももらえた。


 びっくりした。こんなに早く見つけてもらえるなんて思っていなくて、戸惑いの方が大きかった。


 けれど、初めてもらえた反応に、私の「好き」が誰かに届いた気がして、心が踊った。


 それから、もっと書きたいと思えるようになった。


 読まれなくてもいいと思っていたはずなのに、やっぱり誰かに読んでもらえるのは嬉しくて、反応があるたびにどんどん心が満たされていった。


 ただの趣味で始めた小説。でも、いつの間にか私の生活の一部になっていた。


 仕事が忙しくても、辛いことがあっても、小説を書くと気分が上がった。小説を書き始めてよかったと、何度も思った。


 そんな日々を過ごしていると、ある時、仕事が立て込んで更新できない日が続いた。書きたいのに書けなくて、落ち着かない気持ちで過ごしていた。


 それでも、なんとか時間を作って投稿した。そのとき、「生きがい」というコメントがされた。


 何気ない言葉だった。深い意味がないこともちゃんと分かっていた。


 それでも、その一言にハッとさせられた。


 私は小説を書くのが好きだ。でも、読むのも好きだ。アニメも、漫画も、ゲームも全部が好きだ。


 学生時代、嫌なことがあっても好きな作品を楽しみに頑張れた。その作品のおかげで励まされたことも何度もあった。


 推しが活躍すればテンションが爆上がりして、嫌なことが待っていても「かかってこいやぁ!」と思えるくらい前向きになれた。


 初めてコメントをもらった時。


 初めてブクマされた時。


 初めてレビューをもらった時。


 初めてギフトをもらった時。


 初めてファンアートを描いてもらえた時。


 その感動は昨日の事のように覚えているし、忘れられない。


 今でも貰える読者様からの反応、一つ一つが嬉しくてたまらない。


 元気がなくなった時、読者様から頂いたコメントやレビューを読み返して何度も勇気を貰った。


 でも、そのコメントを貰ってから違った方向でもみれるようになった。


 私はずっと、全部自分がもらっているものだと思っていた。私ばかりが喜んで、私ばかりが励まされているのだと思っていた。


 でも、違った。


 私の作品を面白いと思ってくれる人。楽しみに待ってくれる人。推しを作ってくれた人。


 そういう読者の方たちに、私も同じように、何かを返せていたんだと気づけた。


 それから、書くことがもっと楽しくなった。


 私の作品を好きだと言ってくれる人たちに、私が支えてもらった分、もっと恩返しがしたいと思った。


 私の書いた物語で、誰かが少しでも元気になれたり、明日も頑張ろうと思えたりするなら、それはとても素敵なことだと思った。


 だから私は、今も書き続けている。


 自分のためだけじゃない。私の小説を好きだと思ってくれる人たちへ。私を励ましてくれる人たちの力になれているのだと思うと、また書こうという気持ちが湧いてくる。


 その思いを糧に、私は今日も筆を握っている。

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