Sweat My Die

麝香連理

第1話

 ガタゴトと、悪路を突き進む馬車。


 その荷台にはゴミのように扱われ、ボロボロになった子供達。


 そんな劣悪な環境で生きる希望を失った少年少女達の中に、はい。俺がいます。


 どうやら俺は奴隷みたいだ。布切れみたいな服に首輪。それも裸足。バカでも理解できる。


 孤児なのか、はたまた親に売られたのか。

 残念ながら前の魂の記憶は引き継げなかった。まぁ、記憶喪失になっても失われない知識があるように、俺にも最低限の知識は残っている。

 正直助かる。



 まぁ、やれることは絶望するだけなんだが。


 どうも、加藤弥太郎、享年三十七。

 死因は生牡蠣です。対戦宜しくお願いします。





 ………………しかしまぁ、やることがない。

 この身体の少年の手の感じからして、小学生ぐらいだろうか?知識として、ここが日本でも地球でもないことは分かっているが、如何せん情報が無さすぎる。

 分かっていることは魔物が日常的に出現し、それを討伐するような、ファンタジーな世界観ってことぐらいか。


 ハァー………ステとか見れねぇかなぁ。


 そう思って昔プレイしていたネトゲのメニュー表示を想像したら、それと全く同じウィンドウが現れた。



 は?…………………周りの子には見えてないのか。




 えっと?何々って、名前もスキルもレベルもステも無いじゃん!


 あるのは………マジックとスキル。魔法とスキルが別区分なんだな。それとゴッドスキルってやつと、カルマスキルってやつだな。




 あ、詳細見れる。


 スキル:日用や戦闘、幅広く使えるスキル。修練度に応じてそれぞれのレベルが上がる。

 マジック:魔法スキル。修練度に応じてそれぞれのレベルが上がる。


 どっちも空欄だから俺は何にも持ってないってことかね。じゃ、特殊そうなこっちも。


 ゴッドスキル:神の因子を取り込んだ者が保有する唯一無二のスキル

 カルマスキル:神の因子取り込んだ者が受ける神からの試練のスキル



 ふーん、読んだ感じハイリスクハイリターンってやつだな。堅実に行くなら所持してない方が…………おい待て、なんか持ってるぞ!?




ゴッドスキル:『有備無患』

自身に関わる全ての能力が極大アップ



カルマスキル:『流汗』

汗をかくとゴッドスキルの効果が無効かつ、自身に関わる全ての能力が極大ダウン



 …………………ハァ?

 ちょっと待て。なんだこれ?汗をかくのは生理現象なんだが?

 ど、どうする?汗をかかないって無理では?汗をかく原因といえば暑さ、緊張、辛いもの……か。他に何があるか……………




 待てよ?今俺は汗をかいてないから、使えるんじゃないか?ゴッドスキル。



 『有備無患!』



 わ、すご!?身体の痛みも空腹も感じないぞ!?

 え?これなら脱出出来るんじゃないか!?



 この際だ、行き当たりばったりでもなんとかなるだろ。


 敵(大人)は合計六人。

 うん。今の俺なら行ける気がする。



 俺は立ち上がって敵Aの近くまで向かう。

「あ?なんだガキ?」

「よい、しょっ!」

 俺が鉄格子の内の一本を軽く殴る。

 あまりの衝撃でその一本は折れることなくだるま落としのように横にスライドしていき、敵Aの股間に激突しながら両方とも暗い森の中に消えていった。

 うっわ痛そー


 ま、奴隷商人に同情なんていらないか。



 そのまま残りのB~Fも魂が無くなるくらいお掃除して、子ども達が逃げられるように鉄格子も破壊した。

「元気で~。」



 その後その子ども達がどうなったかは把握してないが、元気なら良いね。






 走ってみてるけど木、木、木、木、木、木、木。

 変わり映えしなさすぎ。

 

「あ、身体能力が上がってるならハイジャンプとかしてみたりっ!」

 おっほ、出来た出来た!うぅーむ、周囲にでかい街はなさそう。あるとしても村くらいか?ちょっとそこに寄ってみよ。


 俺は綺麗に着地をして、その場であとどれくらい村までかかるか計算しようとしたその時、全身が何十人もの大人にのしかかられているような感覚に陥り、耐えきれず俯せに倒れた。


 俺が状況を把握できていないでいると、額からツーっと水の雫が垂れてきた。


 汗ってこれだけ!?ちょっ、いやマジかよ!

 大汗とかじゃなくてこれも判定内かよ!


 クッソ冷静に考えれば運動を急に止めたから身体を冷やすために汗腺が活発になるんだよなぁ。



 極大ダウン………言い得て妙だな。瞬きするのでやっとだぜ。せめて、木の上とかが良かったなぁ。ここじゃぁ、魔物にでも喰われて死んじまうよ…………



「おぉーい!」




 おぉ、死にかけの幻聴ってこんなにハッキリ聞こえるのか………………あぁ、やば。汗が増えてきた。

 意識………が…………………









「おい!あそこ!子どもが倒れてるぞ!」

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