教会の鐘が鳴り響く。
けれどその音は、ただの祝福としては胸に届かない。むしろ、これから彼らが歩いていく過酷な現実との戦いの始まりを知らせる合図のように聞こえる。
この物語は、祝福される出来事を疑うのではなく、その祝福がどれほど重いものかを描いているように思える。立場を背負い、役割を引き受け、それでも人であろうとする。その姿は声高に語られないからこそ、静かに胸に残る。
鳴り止まない鐘の音は、幸福を約束するものではない。ただ、前に進むことを促す音として、淡々と響き続けている。その冷たさとやさしさが同時にあるところに、この作品の強さがあると感じた。