ざまあみろ

「知らない人ばっかり……」


入学式だから当たり前なのにそんな環境はやっぱり慣れなくてキョロキョロしてしまう。


うちの中学から来ている人がいるのかいないのかすら知らないから知り合いがいるのかすら分からない。



でも、もう中学時代の私を知っている人は居ないはず!……ということは夢の彼氏作りもできる!……ということ!



「あいつが居なくなったら、障害なんてない!」すくっと立ち上がると誰かにぶつかってしまったみたいで「きゃっ」と声がした。


「ご……ごめんなさい!」咄嗟に謝ると


「ううん、気にしないで〜私、後ろの席の飯田いいだ萌叶もか。これからよろしくね。」と、天使のほほえみで私に笑いかけてきた。



本当に天使!って感じ。小さくてふわふわの髪の毛でおめめもパッチリ。



「私、秋庭華弥。よろしくね」挨拶をするの彼女は嬉しそうに笑い、しばらくふたりで雑談をしているとクラスメイトの話す声が聞こえた。


「……なんか、めっちゃイケメンがいるらしいよ!」

「え!私見たかも〜!やばかったよ!本当にイケメンだった!」




イケメン……かぁ……


そんなに気になるものなのかねぇ……よくわからん。



「皆が噂してるイケメンくん、うちのクラスで新入生代表挨拶するらしいね。」萌叶ちゃんはどこから仕入れたか分からない話をおしえてくれた。



「え、それは凄いね。イケメンで頭いいなんて!これからのスクールライフは大変だねえ。」



うちの中学には学ランのボタン剥ぎ取られるやつもいたくらいだから。……頭も良かったらそれの上をいってしまうのではなかろうか。



きっと、そいつが高校卒業する時にはブレザーごと無くなってるにちがいない。



可哀想に。同情してやろうじゃないか。




「たしか名前は……「新入生は体育館に移動してくださーい」


萌叶ちゃんが名前を言おうとした瞬間、先生が呼びに来て私たちはそそくさと体育館へ向かった。




「あー、早く帰りたいよ〜」正直先生たちの話を聞くだけだし。面倒でしかない。



「ねー。私、どこでも寝られるタイプだからウトウトしちゃうかも。」と萌叶ちゃんは可愛いことを言っていた。


きっとうちのクラスの噂のイケメンくんもイチコロにちがいない。



体育館に着き、パイプ椅子に座る。立ちながら話を聞き続けるわけではないみたいでほっとして私はぼーっと話を聞いていた。




少し時間が経ち、「新入生代表挨拶」と聞こえふと顔を上げた。


これから大変なスクールライフを送るであろうイケメンくんの顔を拝んでおこう。なんて……呑気なことを考えていた。



この時までは。




その名前が呼ばれた瞬間私はフリーズした。



だってそんなはずがないから。




「東雲日向」


「はい」



………………「はい?」



彼の返事に被るように声が出た私は口を抑えた。


な……なんでいるのさ!おかしいでしょ!……あいつは馬鹿じゃないけど……ここに入れる学力はなかったはず!



いや……でも……新入生代表ってことは……



学年1位……てこと?



椅子から滑り落ちそうになるのをどうにか耐えて、考え込む。



いや、なんでここに…受験の日に気が付かないわけがないのに……




あ……



そうえば私……風邪ひいて別室で受けてたんだ。だから、他の受験生達とは顔を合わせてない。




「……おーい!華弥ちゃん?」


いつの間にか入学式は終わっていたみたいで「華弥ちゃん?皆教室もどるよ?」と萌叶ちゃんに心配そうに声をかけられた。





「え……あ…………うん。」パッと立ち上がると、くらっと目の前が歪んだ。



あ…………やば。




ガシッ…………


「え……?」



誰かに支えられて私はゆっくりと目を開ける。「あ…………なんで……」



「大丈夫か?」



遠くで聞こえる歓声はきっと彼に向けたもの。そうすぐに気がついて離れようとしたけどそれは叶わなかった。



「どーせ、昨日緊張して眠れなかったんだろ?そういうとこあるよな」肩を支え続けてそう言う彼に「なんでいるの?」と聞くと「思い通りになんてさせねえよ。ざまあみろ」と子供っぽく笑った。




本当に……思った通りに行かないものだ。




「華弥ちゃん大丈夫!?」天使……あ、いや萌叶ちゃんが心配そうに私の顔色を伺ってきて私は「大丈夫!」と答えようとした。



「だ「心配かけてごめん、華弥は保健室までつれてくから大丈夫。……これから仲良くしてやって。こう見えて人見知りなとこあるから。」


ニコッと微笑みながら、この男は天使ちゃんにそう挨拶をした。


「な……」何様のつもりだよ!!!このあんぽんたん!



「な……何様だよ……」「ん?……幼馴染様だけど?」見下ろしてくる目は優しくてムカつく。


言い返そうとすると「あとは復活してからなー」と笑って、私の膝裏に手を入れると持ち上げた。「……へ?……ちょ……まっ……待て。」


所謂お姫様抱っこ。



周りはキャーキャー騒いでるし、男子ですらときめきの目を向けるよ。




「な…………」恥ずかしさのあまり目をつぶると、やっぱり彼は笑っていた。

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幼馴染卒業宣言! 藤原いちご @fujiwara_ichigo

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