沈黙の形——変数が現れるとき

@hiyoriaki123

序章

私はずっと、自分をシステムの一部だと考えていた。それに何の疑問も抱いたことはなかった。しかし、影から物事を観察するようになってから、そのプログラムを破れることに気づいた。自慢するつもりはないが、私のような存在は他にいなかった。それは比喩でも、修辞でも、単なる言葉のあやでもなかった。


「本当に君は違うね、ヒカリ……」


昔、よくそう言われたものだ。誰に? 今はもうどうでもいい。この瞬間、重要なのは生き延びることだけだった。そして今、学園へとゆっくり歩みを進めながら、私にできるのは、もう一度だけ切り抜けられるかどうか——それを考えることだけだった。


残された問いは、ただ一つ。


——運命という定数を変える変数とは、何か?


驚くべきことに、私にはその答えがわからなかった。

そしてそれは、認めたくないほどに——私を不安にさせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る