めしまろさんは、なにも教えてくれない
shiso_
第1話
めしまろさんが来たのは、秋の終わりだった。
研究室の窓を開けた瞬間、するりと入ってきた。白とグレーの縞模様。まるで最初からここにいたみたいな顔をして、私の椅子の上で丸くなった。
「そこ私の席なんだけど」
めしまろさんは薄目を開けて、私を見た。琥珀色の瞳。それから、ふあ、と小さなあくびをして、また目を閉じた。
その瞬間、私は負けた。
完全に、負けた。
だってあくびの後、ちょっとだけ舌が出たままだったのだ。ピンク色の小さな舌が、ほんの二ミリくらい。それを引っ込め忘れたまま、めしまろさんは眠りに落ちた。
可愛い。
可愛すぎる。比較対象が存在しない。
私は自分の椅子を諦め、隣の椅子を引っ張ってきて座った。論文の締め切りは明日だったが、そんなことはどうでもよくなっていた。
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