時を詠む約束:白い闇と白い未来の物語
しわす五一
第一部:白い闇と、絶望の継承
プロローグ 『白い闇と白い未来』
それは、視界を侵食する純白の静寂だった。無数の映像の断片が、意識の奥底で乱反射する。
――砕け散る。不敗を誇った軍事国家『アーシュラム帝国』の、白亜の城壁が。まるでガラス細工のように、いともたやすく砕け散る。
――燃え盛る。帝都『アーシェス』の象徴である時計塔が、黒煙を上げて燃え盛る。火炎の赤色は、すべてを塗り潰す白の中に吸い込まれるように、鮮やかさを失っていく。
――肉の山。地平線の彼方まで続く、積み重なった帝国兵たちの死骸。
その破壊の中心に、一匹の化け物がいた。
頭部から天を突く二本の禍々しい角、そして全身の皮膚に至るまで、それは生を拒絶するような、不気味なほどに無垢な純白の甲殻に覆われていた。その死装束のような白を汚すように、左腕には重厚な『鉄甲』を嵌め、手には墓標の欠片を思わせる『黒鉄の大盾』を握りしめている。
その『白い化け物』が、盾で装甲を叩き潰し、鋼をも容易く引き裂く両手の鉤爪を振るうたび、帝国自慢の魔導装甲兵は塵のように粉砕され、虚空へと消えていった。
「なぜだ……! なぜ当たっても死なん!? 予知は絶対だ……。予知は常に正解を教えているはずなのに!! なぜ正解の通りに世界が動かんのだッ!!」
崩落する玉座の間。皇帝ゼノンの絶叫が響く。
未来を予知し、運命を支配するはずの魔導装置『神の目』は火花を散らし、そこに映るはずの『確定した勝利』は、一匹の化け物が撒き散らす、おおよそ人の常識では測れないほどの圧倒的な暴力によって、無残に塗り替えられていた。
化け物は言葉を発しない。ただ、帝国そのものを壊滅させるかのような本能的な渇望のままに、最深部へと突き進む。
「――グオォォォォォンッ!!」
それは、喉を震わせる「声」などではなかった。体内に溜まりすぎた殺意が、ひび割れた器から漏れ出した衝撃波のような、異質な音。知性も、言葉も、慈悲さえも削ぎ落とされたその咆哮は、崩落する城壁をさらに激しく震わせる。
その視界の先では、すべてを飲み込む絶望の予兆――『白い闇』が、一人の少女を飲み込もうとしていた。
これは、未来を予知する少女とその仲間たちが、残酷な運命を書き換え、その果てに何にも染まっていない『白い未来』を手繰り寄せるために歩み出す――絶望と再生の物語である。
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