<孤独>とは、心の中に何もないことかもしれない。

「若い頃、いつも寂しくて仕方がなかった。」

この文章で始まる本作は、孤独な一人の人間が、人ではなく、自然によって癒され、回復する、という短いお話である。



若いころ──と言って、いつからいつまで、ということはないのだが──どうしようもなく“自分は一人だ”と感じる時期というものがあった。
おそらくそれを感じている人は多いはずなのに、それでいて、誰とも分かち合えない。

そういった経験はないだろうか?



本作での“私”は、孤独を感じた時、敢えて人から離れ、いっそ物理的な“孤独”に身を置く。
そこは綺麗な川が流れるところで、何もせず、ただそこに身を置く。


誰もいない空虚な心の中を自然が満たしてくれたかのように、やがて夕闇が迫る頃、“私”は満たされ、また戻っていく。


孤独を埋めるために、人は誰かに寄り添ってもらうことを求めてしまうものだが、それは時として執着や失望をもたらし、さらなる孤独へと人を追いつめる。

もしかしたら、心の空いた部分を埋めるのは、人ではない方が良いかもしれない。
それは或いは弱さともいえるかもしれないが、そういう自分の癒し方を知れば、やがては強く生きられるような気がする。