未知の領域
広之新
プロローグ
国立競技場は騒然となっていた。陸上日本選手権の走り高跳びで無名の選手が日本記録タイを出したのだ。
「メディカル工科大の大山選手。次は2メートル36センチ。ここから先は未知の領域です・・・」
実況するアナウンサーも興奮を抑えきれない。観客は日本新記録の誕生を期待して総立ちになっている。
やがて大山選手が出てきた。顔を紅潮させ、彼も興奮状態にある。ただ落ち着かないのか、体をしきりに動かしている。
ようやくスタートの時が来た。彼は両腕を上げて手を叩いて、観客に手拍子をリクエストする。
「パン! パン! パン!・・・」
場内が手拍子の音に包まれた。そのリズムに乗って大山選手が走り出した。スピードに乗っている。このまま飛び上がれば必ず跳べる・・・誰もが思った。だが・・・
「うううっ!」
バーの前で急に大山選手は胸を押さえて苦しみだした。口からは泡を吹いている。彼はそのまま倒れ込み、全身をけいれんさせた。
「きゃあ!」
場内のあちこちから悲鳴が上がった。あわてて係員が大山選手に駆け寄ったが、すでに心臓は止まっていた・・・。
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