未知の選考基準

異端者

『未知の選考基準』本文

 いよいよ、中間発表の時だ……が、正直期待していなかった。

 俺の作品は、ろくに評価が付かずにいた。

 俺がスマホで見ているのは、小説投稿サイト「ヨムカク」でもよおされた小説コンテストの中間選考結果だった。

 応募はしていたが読者からの評価はかんばしくなく、読者選考があるのが絶望的だった。

 一万件を超える作品数だ。編集者が真面目に読むはずがない。どうせ評価が高かったものだけ読んで、あとは放置するに決まっている。

 だから、俺の小説がどんなに素晴らしくても、それで「負け」なのだ。

 俺は陰鬱いんうつな気持ちで見ていたが――あった! 俺の小説だ!

 評価がろくに付かなかったのに……編集者は真面目に読んでくれていたのだ!


「あの~これ入れて大丈夫ですか?」

「ああ、別に良いよ」

「ですが、これ……あまり閲覧数もないし、評価も……」

「だから、入れておくんだよ。馬鹿なワナビは、低評価のやつも読んでくれてるって思うからな。どうせ受賞させなければいいし」

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未知の選考基準 異端者 @itansya

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