眠れる森の美女~目覚めから始まる物語~

山下ともこ

第一章:目覚めの時

「伝説のルミエール城が隠されている…と噂されるのはこの辺りか…」

フィリップ王子は、手にした地図を見ながら、

兵士たちとともに茨を切り開き、開拓地を進んでいました。


50年続いた戦争がやっと終わり、

フィリップ王子の国・ノヴァール国が勝利をおさめ、

国土を広める事が出来たのでした。


その新たな領地には、伝説の城が存在すると言い伝えられていました。

茨に閉ざされ、誰もを拒む城――それが“伝説のルミエール城”でした。


フィリップ王子が兵士と共にナタで茨を切りながら進んでいると、

突然、深い茨の森がふっと淡い光を放つと共にゆっくりと消え去り、

堂々とした高い城壁が現れました。


「これが伝説のルミエール城か…」

城壁の奥には荘厳なおもむきの高い塔もそびえていました。


フィリップ王子と兵士たちはその城に引き寄せられるように近づいて行きました。


城門はフィリップ王子たち一行が近づくと、

まるで「おまちしておりました」とでも言うように、鈍い音を立てて開き、

フィリップ王子たちを城内へと招きました。


城内は静まり返っていましたが、人の気配がありました。


フィリップ王子たち一行は城内を散策し始めました。

城内には椅子に座って眠る侍女や、床に座り壁にもたれて眠る兵士達。


大広間の扉を開けると、

玉座には立派な王と妃と思える人物が並んで座り眠っていました。


そして、大広間の中央には天蓋に覆われた立派なベッドが一台置かれていました。


フィリップ王子は

「何故、広間にベッドが?」

とベッドに近づき中をのぞいてみました。


すると、そこには、長いまつ毛を閉じた

自分と同年代位と思われる姫が横たわり、微かな寝息を立てていました。


「美しい…」

フィリップ王子はその姫に触れたくなる衝動に駆られました。


ですが、彼は伸ばしかけた手を止め、考えました。

「触れてもいいのか?いやいや、ダメだろう…

 知らない姫だし…でも…」

フィリップ王子の心は混乱していました。


その瞬間、姫のまぶたがゆっくりと開き、

うつろな目がフィリップ王子をとらえました。

「……え…私は何を……?」

と、小さな声でつぶやき、

次に大きく目を開けフィリップ王子をとらえると、

「ど、どなたですか!?」

と叫びました。


目が覚めると、見知らぬ鎧姿の男が立っている。

この状況に姫は混乱し、恐怖しました。


フィリップ王子は咄嗟に体を後ろに引き、少し距離を取りました。

「落ち着いてください。大丈夫、姫を傷つけたりしません」

フィリップ王子は柔らかな声を発しました。


姫の瞳は、大きく見開かれ、まるで夢の中に迷い込んだかのようでした。


長い眠りで靄が掛かったような意識が、一気に現実へと戻ります。

「私は…15歳の誕生日を祝ってもらっていたはず…

 なのに、何故、鎧姿の方がここに居るのですか!」

姫は声を張りながらも、恐怖が消えません。


「失礼しました、私はこの国の王子・フィリップです。

 領土を開拓していたら、茨が消えて、この城を見つけ、入らせて頂いたのです」

フィリップ王子は跪き、頭を下げました。


姫はフィリップ王子の礼を尽くす様子を見て、少し落ち着きを取り戻しました。


フィリップ王子は姫に話しかけます。

「このルミエール城は、伝説の城と言われていました。

 茨の森に覆われ、長い間、誰も入れなかったのです。 

 その間、世界は大きく変わりました。 

 何があったのか、教えて頂けませんか?」


姫は震える手でキルトの端を押さえ、深く息をつきました。

「…私には、何もわかりません。

 父や母なら、何か知っているかも…でも…」

と、口ごもってしまいました。


100年の眠りから目覚めた姫と、現実の世界に戻ったルミエール城。

眠れる森の美女とフィリップ王子の物語は、ここから静かに動き出したのでした。




つづく~第二章へ~




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