第3話 ダンジョン攻略 1
島の中央にダンジョンの入口があった。と言っても大きな穴が開き、螺旋階段が壁に沿ってあり、入口が5カ所あった。
何処から入っても良いというものだ。
これまで多くは一番下の入口から中へと入っていった。普通はそうだろう。最下層なのだから少しでも近い場所を選ぶ。
それでも撤退を余儀なくされていたのだ。
アーサーは一番下の入口の手前の入口に立ち
「ここから入ろう」
と言うと入口を潜り魔法で中を照らした。
奥からギャァギャァと何かの鳴き声が響きダンジョンの暗さと相まって恐怖感が身体を包み込んだ。
俺が勇者じゃないことくらい俺が一番わかっている。
アーサーはそう心で呟いた。
本物の勇者には勇者の印が身体の何処かにあるのだ。
自分にはない。
いや、これまで勇者として旅立った全員に印はなく、全員が戻っては来なかった。
『アーサー、ブラウン家を頼むな』
兄のアレックスはブラウン家を立て直すための金と引き換えに2年前に10番目の偽勇者として旅立って戻ってこなかった。
今自分の後ろについて歩いている3人が兄の死を見て、立ち戻りその時の階層までの情報を持って帰ってきたのだ。
一つ分かっているのは入口は何処から入っても同じだが、ダンジョンの階層に飛び込むかは運次第だという事である。
同じ5つ目の入口でも一番上の場合もあった。反対にかなりの下層の場合もあった。
アーサーは暗いダンジョンを通り抜けて急に開けた場所に立ち目を見開いた。
ダンジョンの中は明るく石の宮殿のような作りとなっていた。
「ここは今まで到達した下層の手前だ。運がいい」
ポイドが言った瞬間にバーサーカウルフが3匹姿を見せた。唸り声を上げながらアーサーを見つめていた。
アーサーは剣を構えると
「早速、お出ましか」
と呟くと足を踏み出した。
同時にポイドも足を踏み出し右手のバーサーカウルフと切り倒した。アーサーもまた剣を振り上げて振り下ろすとバーサーカウルフを叩き斬った。
もう一匹のバーサーカウルフは魔導士のルルドが杖を前に魔法陣を描くと
「ファイアーボール!」
と火球をぶつけて倒した。
ダンジョンの魔物は倒れるとまるで幻のように消え去っていく。
それを皮切りにマジックコッカリカと言う虹色の鳥や丸いゲル状の生物ブルーゼライムなどが進むたびに姿を見せた。
そして、下へ降りる階段の踊り場にはボスが存在する。
アーサーは羽を生やした大蛇を前に剣を構えた。
「こいつを倒さなければ下へ行けないってことだな」
そう言って足を踏み出すと剣を横へと真一文字に薙った。
瞬間に風の刃が走り大蛇へと向かった。
ルルドもまた杖を前に翳し
「ストーンヘッジ!」
と魔法陣を展開し石の破片を大蛇に突き立てた。
ポイドも素早くうめく大蛇の懐に飛び込むと下から上へと剣を突き上げた。
大蛇は声を上げると横倒しになり消え去った。
他のダンジョンの場合は魔物を倒すと貴重な素材を落としたりするがこのイシュールのダンジョンだけは何も落とさないのだ。
アーサーは階段が開けると
「行こう」
と声をかけて階段を降りた。
次の階層がこれまで開拓された階の一番下であった。
つまり、多くはここまで到達せずに死ぬか、ここのボスで倒れるかだったのだ。
アーサーは蠢く魔物を倒しながら踏破し、階段の手前へとたどり着くと足に当たったペンダントを目に息を飲み込んだ。
白骨化した遺体がしているペンダントである。
「これは」
そう、兄に旅立つ日に母の形見のペンダントを渡したのだ。それであった。
「にいさん」
兄の遺体なのだ。
アーサーは正面に立つ岩の巨人を睨んだ。
「お前か! 兄さんを殺したのは!!」
ポイドもルルドもシャールも息を飲み込んだ。
何回目かの偽勇者の弟だと分かったのである。
永獄の守り人 如月いさみ @isami_ky
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。永獄の守り人の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます