未知の世界へ

遠山ゆりえ

第1話

 ふわふわとした綿あめの中に、私たちは暮らしていました。ベトベトした感じではありません。甘く何もかも満ちたりていて、何の心配も無い世界。美しい光が差し込み、静かな音楽がいつも聞こえていました。自分が何者であるとか明日はどうしようとか考える必要も無く、ただ私たちは存在していました。


 そんなある日、声がしました。

「これから未知の世界に行きたいものはいますか?」

 未知の世界? それは一体何処なのでしょう? この世界以外に、違う世界があるというのでしょうか?

「未知の世界で未知の体験をしてみませんか? 冒険、恋愛、修行、学習、労働……さまざまな体験を楽しめますよ」

 冒険? 恋愛? なんとなく聞いたことがあるワードですが、具体的にどんなものなんでしょう? 想像もつきません。

 好奇心が抑えられず、私は思わず

「行きたい!」

と心の中で叫びました。


 ◇


 めまいがする程の、強い光の渦を幾つか通り抜け、気がつくと私は狭い部屋にいました。薄暗く、一定のリズムが聞こえます。心地よいリズムです。温かくて、ずっとこの場所に居てもいいと思いました。ここがあの未知の世界なのでしょうか?


 どれくらい経ったのか覚えていませんが、突然この部屋を出なければいけない時が来たのを感じました。長くて狭い通路を抜け出し更なる場所へ行くのです。あまりにも通路が狭く、初めて恐怖心を持ちました。これが冒険の始まりなのでしょうか? 苦しい! でもあと少しです。かなたに、ぼんやり出口が見えてきました。



「おめでとうございます! よく頑張りましたね。元気な女の子ですよ!」

 

まばゆい光の中、私は誰かに抱き上げられ未知の世界に着いたようです。この音は何? あぁ、私自身が出している、安堵と歓喜の声でした。


 





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未知の世界へ 遠山ゆりえ @liliana401

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