ラッキーデイ
浦川 暁天
第1話
彼女に初めてを捧げた。
日が部屋を覗く前に目が覚めた。
起きると体の痛みを感じると同時に
得体の知れない幸福感が身体を巡った。
暗い朝をしばらく眺めていた。
視線の先に女の顔があった。
昨日のダンスフロアにいたような気もした。
私は彼女の髪を撫でた。
私は喉が乾いたため廊下に出た。
棚に置かれたぬいぐるみが
投げ出された下着が
私に喜びを送っていた。
鏡に映る自分を片目にダイニングに出た。
まるで生活感がないなと思った。
フローリングの感触を足裏に感じていた。
ダイニングの延長にリビングがあり、ベランダを背にした大きなテレビと目が合った。
寂しい家だなと思った。
ふとテレビの影に財布ほどの大きさの蜘蛛が隠れているのを見つけた。
私はそれをつかみ頭から口に入れた。
残りの足が私の口に入るのを拒んだような気がした。
ふと毛並みの整った小さな猫が私を見、恐怖しているのに気づいた。私は猫を安心させたいと思った。
両手で優しく首を掴み、絞めあげた。
両手にぐっと力を込めると首のない七面鳥のようになった。
今際の猫が私の両腕に絵を描いていた。
ふと一つの花瓶が視界に映った。
私の好きな花だ。
花瓶を誰かから奪い取るようにつかみ、フローリングに叩きつけ粉々にした。
頭がぼーっとしていた。
大きな破片を手に取り自分の左腕に勢いよく突き刺した。動脈から生暖かい血液がどくどくと流れた。
ギターを弾けなくなったことを悲観した。
「何をしてるの?」
物音で起きたのだろうか。
彼女が後ろに立っていた。
「………」
そっと振り返り、綺麗な身体を見つめる。
「君は私と出会って間もないだろう。私のことを知る機会なんてなかったんだ。 君は悪くないよ。」
「来ないで…!」
「私は君を心から愛してるんだ。本当だ!この気持ちをどう伝えたらいいんだ?もうこんな世界はうんざりだ!きっと神は私たちを許してはくれないだろう。君だけは私のことを許して、愛して欲しいんだ!」
家主を失った部屋はより寂しく思えた。
私は混ざってゆく血液を眺めながら彼女の体を抱きしめていた。
ラッキーデイ 浦川 暁天 @urakawa_akino
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