京崎護ストーリー 番外編 見える見えないじゃないんだよ!

のの

記憶にある人

 子供の頃から、死んだ人が見える。

 もちろん、小さい時は、死んだ人だとは思わなかった。変わった人だとは思ったけど。



 幼稚園までの道すがら、いつも同じ場所にスーツ姿の男の人が立っていた。


 母が手を握っているので、話しかけられない。

 男の人は、ただ母親を目で追っていて、一緒に歩いている子供がいる事に、気が付いて無いように感じた。


「お母さん、あのおじさん、なんでいつもあの場所にいるの?」


「迷っているのよ。きっと。」


「道に迷ってるの?教えてあげないの?」


「道ねー、まぁ、道と言えば道かもね。悪さをしないなら、自分で決めてほしいわ。さぁ、早く行くわよ。あれには、関わらないでね。いいわね、まもる。」

 母は、返事を聞かずに歩き続ける。



 両親の仕事を聞かれると、決まって答えられない。

 母親に聞くと、

 誰に答えるのかによるわね、大人なら自営業と答えなさい。詳しくは知らないって言っておけばいいわ。どうせ、噂で知るわよ。色んな尾ひれが付いた勝手な職業名をね。子供なら、お化け退治しているって言えば。母親は、何が可笑しいのか、くすくすと笑った。


 母親も父親も、護には優しい親だ。

 だが、職業は分からない。


 酷く変わった風体の人が来たり、スーツを着た沢山の人に囲まれながら、家の庭に車で乗り付け、急いで家に入る人や、お坊さんや神父など両親には色々な友達がいるんだなと護は思っていた。



 ある日、幼稚園に母親ではなくお手伝いさんが迎えに来た。

 母か忙しく来られないと連絡があり、代わりに来たのだ。

 最近、母の身の回りの世話をしているこの女性を護も知っていたので、手をつなぎいつもの道を歩いて帰る。


「見て!あの人ね、道に迷っているんだって。」

 護は、いつもの場所にいるスーツを着た迷子のおじさんを見つけて、お手伝いさんに教えた。


「いやーねぇ、大人相手に迷子なんて、失礼な事言わないの。」

 お手伝いさんは、小さな声で護にしーと人差し指を口にあてた。


 お手伝いさんは、スーツを着た男の人に軽く頭を下げ、通り過ぎようとしたが立ち止まった。

 二人は、何か話しているようだが護には良く聞こえ無かった。


「近くだから、連れて行ってあげましょうね。

 」お手伝いさんが前を向いたまま呟くと、護を見ずに歩き出した。



 スーツの男の人が、後ろをついてくる。


 護は、後ろを振り向いたが、顔がよく見えない。どんな顔をしていただろうかと考えたが、思い出せない。今は、なんだか顔の前に黒い煙があるみたい、護はそんな事を思ったが、今は、歩くことに必死だった。

 お手伝いさんの歩幅に合わせるには、子供の護では、ほとんど小走りのようになっていて、お手伝いさんが手をつないでなければ転びそうだった。


 かなり歩いていた。


 家から、幼稚園までは、10分もかからない。

 母は、その10分の散歩がてらの送り迎えが好きだった。護が小学生になった時、送り迎えが無くなり、残念だわと言っていた。



 もう、とうに10分は過ぎているのではないかと思う。

 周りの建物も見たことが無かった。

 護は、息を切らせながらお手伝いさんに尋ねた。

「どこまで行くの?」


「そこよ。」

 お手伝いさんの声が酷くこもったように聞こえた。

 女の人のような、男の人のような。

 こんな声だったろうか。


 お手伝いさんが立ち止まった。

 交差点の信号は赤い。

 護は後ろを振り向いた。


「あれ、おじさんいないよ。」

 護は、お手伝いさんを見たが、手をつなぐ人は、後ろにいたスーツ姿のおじさんになっていた。


「さぁ、一緒に行こうね。」

 おじさんの声もこもったように聞こえ、黒い煙の顔を近づけてきた。護は、つなぐ手を振りほどこうとした。


 手を強く引っ張られ、護はおじさんと一緒に車道に進んでいた。


 車のブレーキ音とクラクションが響く。


 護が音のする方を見ると、車は凄いスピードで護に向かって来ていた。


「護。」


 お母さん?


 凄い音と女性の叫び声。


 目が回るような感覚。


 目の前は、真っ白で見えなくなった。




 急に、肩を叩かれた。

「なぁ、京崎、聞いてる?」


 護は、夢から覚めたような感覚がした。


 赤信号で、歩道に佇む護を、心配そうな顔でのぞきこむのは、友達の佐々木佳浩だ。

今の護は、高校1年生だ。


 護が立つ、前の通りを車が次々と走り過ぎていく。


 あの時、護は、無傷で病院にいた。

 医者は、驚いていたが、一緒にいた女性が咄嗟に助けたのだろうと言っていた。

 女性に感謝しないといけませんねと医者が母に頭を下げ病室から出て行った。


 お手伝いの女性は、即死だった。

 車を運転をしていた男性は、事故の前後を思い出せないと警察に訴え続けた。



 病院には、念の為、検査入院として一日泊まり、護は退院した。


 家に帰ると、母は、護に人の形をした木の板を見せた。その人の形の板は、縦に二つに割れていた。


「これが、護の身代守札みがわりまもり。」

 護は、不思議そうに母の手のひらに乗る木の板を見た。

 何か筆で書いてあるようだが、護には分からなかった。


「お礼を言って。護の代わりになってくれたのよ。」


「……ありがとう」


 ドアをノックする音と共に、部屋のドアが開いて、父と叔父さんが入って来た。


 父は、護を優しく抱きしめて、無事で良かったと呟いた。


 叔父さんは、ズカズカと護に近づき、

「死者の国は楽しかったか?」

 護の頭を強く撫でると、ソファにどっかりと座った。


 死者の国?


「生意気な奴らだ。子供にも手を出し始めた。」

 叔父さんは、怒っていると言うよりは笑っていて怖かった。


「あら、私も子供の頃狙われたわ。慎平だって狙われたことあるじゃない。」


 母は、僕の手を引き、ソファに座らせる。


「また、護の身代守札みがわりまもりを作っておくわね。だから、怖がらなくて大丈夫。」

 母は、にっこりと笑った。

 それは、いつもの自信に満ちた顔で、父と母の弟である慎平叔父さんを見て呟いた。


「また、分からせてやらないとならないわね。皆を集めてちょうだい。」

 叔父さんは、嬉しそうに父と部屋を出た。


「護も、良い仲間を持ちなさい。まだ、居るはずだわ。力を持つ人がね。」

 さぁ、お母さん達は忙しくなるから、部屋に行きなさいと即されて部屋を出た。




 護は、その後を知らない。


 ただ、今では、あの時とは比べられない程の人が、我が家にやって来る。


 そして、護は、自分の親の仕事を理解したし、覚悟を決めた。


 この友達が、悩む自分を吹っ切れさせてくれた。


「京崎は、ひとりで突っ走り過ぎ!次からちゃんと俺も連れて行くこと!分かった?」

 ビビりな友達の佳浩が、自信満々に笑う。


 護は、笑う。

「どうかなー。佳浩はビビりだからな。」

 俺は変わったんだからと、佳浩が慌ててる。


「さぁ、青だぞ。」

 護は、青信号を見ながら歩き出す。

 今は、友達を守ることも出来る。



 例え、目の前にスーツを来た迷子のおじさんがいても……。




✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

友達の佳浩の佐々木家三兄弟が中心ですが、

京崎護くんが出てくる作品は、

【ちょっとホラー】見える見えないじゃないんだよ!

こちら↓です。

https://kakuyomu.jp/works/16818093092809867537


お時間がございましたら、お立ち寄りいただければ幸いです😊

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

京崎護ストーリー 番外編 見える見えないじゃないんだよ! のの @nono-1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画