第2話 事件

 学校での授業は、正直な話を言ってしまえばそこまで大した物ではない。

もちろん人には向き不向きがあるので学力には差が出るが、別に勉強が出来なくても他の部分で秀でていればそれが評価される。


そう考えると自身は平凡な人間だと言わざるを得ない。

学力面では人より秀でててはいても天才、秀才なんて呼ばれる層には届かない。

運動においても一緒で人よりは秀でていたとしてもトップ層には届かないのだ。


器用貧乏というほど卑下するつもりはないが現代社会においては評価しにくい人間であることは間違いなかった。


まぁだからこそ一芸を極める為にも小説家を目指しているのだが中々芽はでない。

娯楽分野に関してはAIではなかなか発展が難しく職業としての需要が非常に高かった。

一次産業は一部を除き完全に自動化され二次産業についてもほぼ自動化されている。

三次産業についてもAI化の波が押し寄せているが飲食、娯楽分野に関してはまだまだ人間が主導している。


身体能力に秀でているものはプロスポーツ、芸術面に秀でていれば音楽家や芸術家、容姿が秀でていればアイドルなど進む進路は様々である。

勉学が秀でているものは研究職に就く事が多い。

しかしどの分野もスペシャリスト達の集まりでありそこに入っていくには本当に優れた才覚が必要だった。


妹はすでに知識を活かしてVチューバーとして活動をしておりすでに評価されている。

負けずと色々とやってみた結果一番成果がでたのが小説だった。

まぁそれも佳作止まりではあったのだが…。


小説のネタを考えながら授業を聞いていると突然自身のタブレットの画面が乱れた。

何かの不具合か?そう思い画面に触れようとすると突然画面が光り輝いた。

「がぁああ!」

脳が焼かれるような痛みが遅い俺はそのまま意識を失った。



目を覚ますとそこは知らない天井であり身体を起こし辺りを見渡すと他にも何人かの同い年位の人たちがベッドに寝ていた。

「愛斗が一番だったか」

そういって近づいてきたのは父だった。

「久しぶり父さん、1週間振りだっけ?」

自身の今の状況を不安に思うが父さんの顔を見たことで少し落ち着いた。

どうやらここは父さんが働いている病院のようだ。

「久しぶりか…まぁ仕方ないが少し悲しいぞ」

「まぁまぁ、それでこれは一体何があったの?」

「うーん、それについては原因は不明としか現段階では答えられない」

「でも、父さんがいるってことはここ数日というか1ヶ月位ほとんど帰ってきてないことに関係はあるんでしょ?」

「全く誰に似たんだか…鋭いな…似たような現象が各地で起きていてその調査に駆り出されていてな」

「でもニュースとかではやってないよね?」

「今のところあったのは世界中でも数十件、日本では2件だけでそこまで大規模に起きていた訳では無いのでな」

「なるほど…でもここには10人位はいるよね?」

「ああ、ちなみに愛もいるぞ」

「は!?」

驚き布団を剥いでベッドから降りる。

そして父の後について対面のベッドへと向かう。


そこにはすやすやと気持ちよさそうに眠る愛がいた。

「めっちゃ気持ちよさそうに寝てるな」

心配していたのだが無事でよかった。

「少し寝不足気味だったようだからな…全く一端の社会人だから何も言わないが無茶はしないように伝えてくれ」

「了解」

「ということは健康状態には何も問題はないんだな」

「ああ、愛も含めてここにいる子たちに健康上の問題は一切ない。時期に目を覚ますはずだ」

「じゃあ、あれは強烈な光を見た気絶ってことか…」

「全く…本当に無駄に知識は溜めているようだな」

「凡人は色々と努力しないとね」

そんな事を言っていると俺の頭をポンポンと叩かれる。

「お前は充分やっているからあまり卑下するな」

「あいさ」


そんなやりとりをしていると扉が開いて今度は母が入ってきた。

まぁ同じ施設内で働いているのだから母さんがいるのはおかしくないが…。

「あら、心配して来たのだけど元気そうね」

「遅れてきた辺り、そこまで心配してないでしょう…」

「ハハ、バレちゃったか命に別状はないと聞いていたからね。野暮用を片付けてからきたから遅くなったのよ」

父さんは医療研究職だが、母さんは逆にバリバリの現場医療従事者である。

AI以上の医療技術を持つと言われる世界で5本の指に入るほどの名医である。

野暮用といっているのも恐らく手術のことだろう。

現在ではAIによる手術がほとんどであるがAIで不可能と呼ばれる手術は母さんが担当している。

ちなみに母とまともに話すのは1ヶ月振りである。


「それで私の娘の様子は?」

「寝不足が解消されて気持ちよさそうに寝てるよ」

「それは何より」

ニコッと笑う母に安心感を覚えつつ父さんに質問を投げかける。

「それでこれから一体どうすれば?」

「時期に皆が目を覚ますと思うがその時に改めて説明しよう…それまでは愛の側についていてくれるか」

「りょーかい」

俺は愛のベッドの隣の椅子に腰掛けるとスマートデバイスを確認する。

以前はスマホと呼ばれる端末が主流だったが現在では、腕時計型の端末から立体ホログラムが展開されて操作出来るようになっている。


「さて、色々調べてみるか…」

ネットに接続してニュース等を漁る。

今回の現象はどうやら世界中で起きているようで日本以外でも若い人がたくさん被害に遭ったようだ。

今回の事件は12歳~18歳の若者が被害にあったようで世界中で集団昏睡事件として扱われているようだ。


そして色々と情報を整理していると見知らぬアプリが入っていた。

「なんだこれ?」

入れた覚えの無いアプリがインストールされる事など絶対に無いはずなのだが…。

身体に埋め込まれたチップとリンクしているスマートデバイスのセキュリティは命に関わる為、基本的に生体認証を突破しなければ接続することは出来ない。

身に覚えがあるとしたらあの現象のせいとしか言えないのだが…。


さすがに不用意に触る事が出来ないのでこれは父に聞いてみるしかない。

そう思い父の元に行こうとした時にそのアプリが光り輝いたのだった。

「触ってもないのに!?」

そしてアプリが消えて無くなったかと思ったら俺の足元には小さな雪の塊?

白く丸い物が落ちていた。

しゃがんで手を伸ばそうとした所その白い物体に目のような物が現れた。

「ひっ!?」

驚いて手を引っ込めるとそれに釣られたのか白い塊が飛び上がりこちらに飛びかかってきた。

避けようとしたせいで尻もちをついてしまい俺の腹の上に乗っかる白い動物?

そして俺と目が合った瞬間

「マナト!ボク、ユキミ!よろしくね!」

まさかの自己紹介に完全に固まってしまい俺の異変に気付いた父達が走り寄ってきていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る