【モキュメンタリーホラー】~Desired Children~『鈴木花子の子供たち』

六散人

【01】報道番組<モーニングニュース>における、<国立第二十八未来園>襲撃事件に関する報道(2042年7月9日 水曜日)

「皆さまおはようございます。8時になりました。

モーニングニュース、司会の鳥飼浩輔とりかいこうすけです」


「アシスタントの武藤彩夏むとうさやかです」


「早速ですが、衝撃的なニュースが入って来ています。

昨夜11時頃、埼玉県A市にある国立第二十八未来園に暴漢二名が侵入し、多数の死傷者が出た模様です。

現場の状況を、笠松記者から報告してもらいます。

笠松さん」


「はい、現場の笠松です。

ここ埼玉県A市にある国立第二十八未来園の前は、ご覧のように警察と報道関係者でごった返しています。

あちらに見えるのが現場の未来園ですが、警察による現場検証が現在も続いている模様です」


「警察から事件に関する発表はあったのでしょうか?」


「はい。番組が始まる一時間程前に、警察から報道陣に対して、事件の概要の説明がありました。

それによりますと、昨晩11時過ぎ、現場の未来園に二名の侵入者があり、職員及び<未来児>に多数の死傷者が出た模様です。

関係者の話として、事件当時未来児たちは既に全員就寝中だったらしく、警察ではその時間帯を狙った犯行ではなかったかと推測しているようです」


「笠松さん。被害の状況は分かっていますか?」


「はい。警察からの発表によりますと、職員1名と園に所属する未来児27名のうち19名が被害を受けた模様です。

そのうち現場で<未来児>15名の死亡が確認され、職員1名と未来児4名は現場から救急搬送されたようです。

搬送された職員と未来児のうちの1名は現在治療を受けているそうですが、残念ながら残り3名の<未来児>は搬送先の病院で死亡が確認された模様です」


「つまり18名の子供たちが、犯行の犠牲になったということですか。

信じられない数の犠牲者なんですが、犯人は捕まったのでしょうか?」


「はい。近隣住民からの緊急通報を受けて駆けつけた警官隊によって、犯人の男二人は現場で身柄を確保された模様です。

犯人は特に現場から逃走する様子もなく、警察官の指示に素直に従っていた模様です」


「犯人の素性は分かっているのでしょうか?」


「警察からはまだ、犯人に関する情報は発表されていません」


「笠松さん、武藤ですけど。

被害を免れた子供たちは、どうなったのでしょうか?」


「8名の<未来児>たちは幸いにも現場から園外に逃走し、近隣住民に助けを求めたようです。

そして住民からの通報で駆け付けた警察によって、現場付近で保護されたようです。

現在8名の<未来児>たちは、市が準備した避難場所に避難している模様です」


「分かりました、笠松さん。

一旦スタジオに戻しますが、何か進展があったら、またお願いします」


「承知しました」


「さて、あまりに衝撃的な事件だったため、紹介が後になってしまいましたが、本日のコメンテーターの皆さんをご紹介します。

先ず政治評論家の大森昌一郎おおもりしょういちろうさんです」


(政治評論家大森昌一郎のテロップ)

「大森です」


「お隣は弁護士の林崎黎子はやしざきれいこさんです」


(弁護士林崎黎子のテロップ)

「林崎です。よろしくお願いします」


「そして最後はレギュラーコメンテーターの香山徹郎かやまてつろうさんです。


(政治ジャーナリスト香山徹郎のテロップ)

「よろしくお願いします」


「さて、冒頭から強烈なニュースが入って来た訳ですが。

香山さん、いかがですか?」


「ちょっと言葉がないですねえ。

犯人の背景とか目的とかが分かってないので、それについては現時点でコメント出来ないんですけど。

被害者の大部分が子供でしょう?

しかもDesired Children、法的には<未来児>か。

犠牲になった子たちは今年廃止された、あの悪名高い人口増加促進法が施行された2033年の4月以降に生まれた子たちでしょう?

ということは最年長でも、8歳か9歳にしかなってないんですよね。

それを15人も惨殺するなんて、犯人を巫山戯ふざけるなよって怒鳴りつけてやりたい気分ですよ」


「(林崎)私も香山さんと同意見です。

確かに人口増加促進法は問題だらけの法律でしたけど、生まれて来た子供たちには、何の罪もないじゃないですか。

本当に犯人を許せないですね」


「(鳥飼)お二人の怒りは、私もご尤もだと思います。

そして今お話の出た人口増加促進法についてこの後振り返りつつ、今ある情報で事件の詳細を見ていきたいと思います。

その前に一旦CMに入ります」

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