【お題フェス11未知】転校生は着ぐるみ少女!?~ドイツ出身のクリスさんの正体は未知数である~

八木崎

衝撃的な転校生



 春――出会いの季節……らしい。

 少なくとも、俺以外の誰かにとっては。

 高校2年生になった俺――葉山敏樹は漠然とした出会いを求めていた。


 小中高とこれまでモテた経験も無く、灰色の青春を現在進行形で送る日々。

 いい加減、新たな人生を歩みたいと思う今日この頃。

 つまり、彼女が欲しい。これに尽きる。


 しかし、現実というのは残酷で、彼女が欲しいからといって、簡単に出来るものではない。

 クラスにいる女子はどうも脈無しだし、それ以外も……何かビビッとこない。

 まあ、彼女がいない分際で選り好みすんなって話だけども。


 そんな風に退屈で代わり映えの無い日々を過ごしていたある日、思いも寄らない転機が訪れた。


「実は今日、転校生が来るらしい」


 クラスの中で交わされるそんな噂話。

 なるほど、転校生。なんて良い響きなんだろうか。

 そして聞く限りでは女の子だという。より良い。

 しかも、なんと……外国人――ドイツ出身なんだとか。


 これは期待感が高まる。

 青春の香りがプンプンと匂うじゃないか。

 春先に転校生の女の子がやって来る。ラブコメの定番じゃないか。


 一体、どんな女の子なんだろうか?

 外国人というからには……金髪の美少女なのか?

 それとも、プラチナブロンドな美女なのか?

 そんな妄想を繰り広げながら、俺はその時を待つ。


「あー、皆、静かにしろー」


 チャイムの音が鳴り、担任の先生が教室へと入ってくる。

 それを合図に、朝礼が始まる。


「えー、本日ですが……このクラスに転校生が来ることになりました」


 その一言にクラス中が沸き立つ。

 早く紹介しろと言わんばかりの盛り上がり。


「はいはい、静かに。そんな調子じゃあ、紹介が出来んぞー」


 パンパンと手を叩いて、先生が言う。

 そうだ、一旦落ち着こうか。

 まだまだどんな子なのか分からない以上、フライングは良くない。


「よし、静かになったな。では、入って来てくれー」


 先生の呼びかけに応えるように、ガラガラと音を立てて扉が開く。

 ペタペタと音を立てて歩く音が響く。

 やがて教壇の前で立ち止まり、クルリとこちらを向く。

 その姿を見て、教室にいる誰もが唖然とした表情で転校生を見つめていた。


「初めまして。今日からお世話になります、クラウディア・ フォン ・クリューガーと申します」


 凛とした鈴の音のような声。

 そう言ってペコリとお辞儀をする転校生。


「故郷ではクリスと呼ばれていました。だから、皆さんもそう呼んで頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」


 たどたどしい日本語……ではなく、流暢な日本語で挨拶を済ませる彼女。

 しかし、驚くべきところはそこじゃなかった。

 関心を向けるのはそこではない。


「え、えーっと……」


 俺は驚愕する。これは現実なのかと疑いたくなる。だって、そうだろう?

 何故なら……転校生である彼女はを着て、俺らの目の前に現れたのだから。


 これまでの人生の中でも、これ以上ないぐらいの強烈な出会い。

 全くといって未知数な存在の登場に、俺はただただ困惑するしかなかったのだった。



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