あなたは私の魔法少女

花束 いと

希望はテレビの中で微笑む

プロローグ

 この世界の平和は『魔法少女』によって守られている。

 彼女らは突如として誕生し、どこからともなく現れては様々な事件を解決してくれる存在だ。


 日本のA区を守っているのは、魔法少女ルビーと魔法少女サファイアの二人。

 特に、爆発的に実績を伸ばしている魔法少女ルビーは、毎日のようにテレビで取材を受けていた。



『今回は強盗犯を捕まえたんですね!

 相手は凶器を持っていたそうですが、ルビーさんはどのように対処したんですか?』

『いつも通り、優しく強盗さんに話しかけました! ちょっと怖かったけど根はいい人だったらしくて、すぐに自首してくれましたっ!』



 歯切れよく輝かしい笑顔を浮かべて、魔法少女ルビーは答える。

 小柄だというのに、誰もが彼女に頼もしさを感じていた。それはアナウンサーも同じらしく、『さすがは固有魔法を自在にあやつる魔法少女ですね!』と真っ直ぐに褒めている。



『――彼女の固有魔法【偏愛ディヴォーション】の力は、人々の心に優しさを思い出させてくれます。

 不安に満ちた現代社会に現れた、まさに希望の光ですね』



 ふと、画面外から子どもたちの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。魔法少女ルビーはその様子を目にしたのか、幸せそうな笑みを見せる。



『ルビーさん、最後になにか一言お願いします!』

『はーい! 画面の向こうのみんなー! 困ったことがあればいつでも駆けつけるから、一人で悩まないでねっ! みんなの幸せが私の幸せだよ!』



 ピンクのハーフツインテールを揺らして、魔法少女ルビーは両手を振りながら最後の挨拶を残した。





 美咲みさきはソファに座ったまま、無表情でその映像を眺めていた。魔法少女ルビーの取材コーナーが終わるやいなや、ため息混じりにテレビの電源を落とす。


 足元では、先程まで画面の向こうに映っていた“魔法少女ルビー”がうずくまっている。

 衣装は剥がれ、全裸をさらしている彼女は“魔法少女”などと大それたものではなく、ただの人間。あるいは、もっと情けない動物のようにも見える。

 全身は痣だらけで、切れてしまったのかところどころ出血していた。



「……希望の光、ねぇ?」



 彼女は、そんなルビーの背に足を乗せる。

 その足で濃い青紫色の痣をかかとで執拗に押しつぶすと、「ぅ゛……」と枯れた声をルビーは漏らした。

 その様子を見た美咲は、うすら笑みを浮かべる。



「天下の魔法少女さまが、まさか家じゃこんなんだとは……誰も思わないだろうね」



 体を震わせたまま、ルビーは答えない。その代わりに、指で床を掴むように踏ん張りながら、ゆっくりと顔をあげた。

 その顔に傷はひとつもない。だが痛みと恐怖、涙と唾液でぐちゃぐちゃに汚れている。


 美咲を瞳に映したルビーは、頬を赤く染める。知らぬ間に口に入っていた自身の髪の毛をくわえたまま、いまにも溶けだしそうなほどに相好を崩す。



「みさきちゃん……だい、すき」



 振り絞った彼女の声はやはりしゃがれている。

 だがその声色には、確かな高揚が含まれていた。










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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


本作は最終話まで休まず、毎週月曜日の19:00に投稿しています。


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