追放聖女はキャンピングカーで気ままに異世界を旅する

茨木野

第1話 私、異世界召喚されました

 私の名前は【乗鞍のりくら 澄子すみこ】。どこにでもいるブラック企業勤めの二五歳、OL。


 否、OLだった者だ。


 過酷な労働に耐えきれず入院→こんな生活続けてたら死ぬと医者に言われる→会社辞める。


 という三連コンボをかましてきた。ついでに退職金と会社からの慰謝料(パワハラセクハラしてきた上司を訴えて勝ち取った)を全額使って、キャンピングカーを買った。


 ちょっと毎日激務が続いたから、久々にキャンプでもと思ったのである。

 私、長野出身で、小さい頃からお父さん(故人)にキャンプ連れてってもらってたんだよね。

 

 大金も手に入ったし、キャンピングカーもゲットしたし、いざ故郷へ……! と高速道路に乗った途端……。


「聖女召喚に成功したぞ……!」


 ……気付けば、私は見知らぬ場所に居た。

 

 見るからに中世ファンタジー風の王宮にいらっしゃるんですが……。

 え、え、なにこれ……?


「聖女が召喚されたかっ?」


 バンッ! と部屋の扉が開くと、これまたザ・王子サマって感じの金髪イケメンが入ってきた。


 聖女……? しかも王子様? なにそれ。

 というか、私の可愛いキャンピー(キャンピングカーの名前)は……?


「おお、美しき聖女よ。突然異世界に招いてしまってすまない……」


 と王子様が私……ではなく、


「え、え、どういうことですかぁ~?」


 ……いかにもザ・女子高生って感じの女の子の前に、跪いていた。

 え、君……誰……?


 困惑するJKに、王子様が軽く説明する。


「今、この世界では魔王が復活し、危機を迎えているのだ。その危機を脱するため、いにしえより伝わる【聖女召喚の儀式】を行い、救国の聖女を呼び出したというわけだ……」

「ふぇ~……。きらりんをですかぁ~……」


 きらりん……? ああ、愛称か。


「救国の聖女よ、名前を」

「あたしはぁ~。【木曽川きそがわ 煌海きらりん】でーす~♡ 17歳のJKです~♡」


 き、きらりんって……。煌めく海って書いてきらりんって……。まじか……。名前だったのか。最近の子の名前ってすご……。


「でぇ~……オバサンは?」


 おば……オバサン? もしかして私のこと?


「あ、えっと……乗鞍 澄子、よ」

「へー……。澄子オバサンも聖女なん~?」


 世の多くの女性達を敵に回したぞ……。

 まあ、いい。


 私も気になっていたところだ。


「おい、どうなんだ?」


 と王子様が近くに控えていた、魔法使いのローブを羽織った男に話しかける。


「聖女召喚の儀式によって呼び出される聖女は1名であります。二人いるということはあり得ない。考えられる可能性としては、召喚に巻き込まれた一般人、でしょうな」

「巻き込まれた……?」


「はい。文献によると、召喚の魔法陣が現れた際に、近くに居てそれを踏んでしまったものを、呼び出してしまったという事例が過去あるようです」


 なるほど……。つまり。


「澄子オバサンは、きらりんの召喚に巻き込まれちゃった系オバサンってわけですね~☆ かわいそ~☆」


 一ミリもかわいそうに思ってなさそー。


「なるほど。たしかに、聖女は若く美しい者だと相場が決まっている。で、あればきらりんが聖女に決まっている」

「あ、えっと……ええ~……私も聖女の可能性があるじゃあないですか」


「ならば、おい、ステータス鑑定を行え」


 と、魔法使いに王子様が言う。ステータスを……鑑定?

 なんだそれ。


「聖女であるなら聖女スキルが備わってるはずだ」

「はぁ……」


 魔法使いが右手を私に向けて、「鑑定魔法」と唱える。

 私の目の前に、半透明の板が現れる。え、ちょ……私の許可は?


~~~~~~

【名前】乗鞍 澄子すみこ

【種族】人間

【レベル】1

【HP】100

【MP】100

【攻撃】10

【防御】10

【知性】10

【素早さ】10

【スキル】野外活動車キャンピングカー

【隠しスキル】野外活動聖女、

~~~~~~


「きゃんぴんぐかー~?」


 な、ナニソレ……? 野外活動車キャンピングカーって。え、なに?


「ほれ見ろ、やはりこやつは聖女ではない。聖女スキルを持たぬではないか!」


 うーん……たしかに……。って、あれ? 


「そこに聖女って書いてあるけど……野外活動聖女って」

「はぁ? 何を言ってるのだ? そんなものどこにも、ステータスプレートに書いてないぞ?」


 あれ……? そうなん?

 でも、やっぱりスキルが野外活動車キャンピングカーの他にも、野外活動聖女っていうものがあるように思えるんだけど……。


 もしかして、私以外に見えていない……?


「おお、みよ! きらりん殿のステータスを!」


~~~~~~

【名前】木曽川きそがわ 煌海きらりん

【種族】人間

【レベル】100

【HP】1000

【MP】1000

【攻撃】100

【防御】100

【知性】100

【素早さ】100

【スキル】聖女

~~~~~~


「これで確定だな。本物の聖女が誰か……」


 たしかにきらりんは私よりレベルが高い……。それに、聖女って名前がついたスキルを持っている。


「きらりんが本物でぇ~。澄子オバサンがパチモンってことですよね~☆」

「うむ、その通りだ。そして、偽物の聖女など必要はない! 即刻出て行くがよい!」


 は……?

 ちょ、ええー……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る