「パーティ連携の良さを確認していたら強敵が現れた」

「右からゴブリン三、左にホーンラビット一……ゴブリン接敵、今!」


 リナの声に一拍遅れてゴブリンたちが飛び出してくる。


 リナの予測通りの位置に出てきたゴブリンが僕の一撃で絶命し、奴らが不意の出来事に泡を食ってるうちに、もう一匹に切りつける。


 リナも三匹目の背後から、短剣で首を突き刺して、ゴブリンたちは何が起きたかもわからないまま、絶命した。


「すごく……体が軽いです……」


 後方でリナとアルトの挙動に気を配っていたマリエが、戦闘が終わると同時にため息をついて呟いた。


「もう四層なのに、全然疲れてないんです……これがアルトさんの加護……」


 遅れて出てきたホーンラビットを軽く一撃でいなして、リナがニコニコしながらしきりに頷いている。


 通常なら、まだダンジョンの二層で足止めを食っているような時間なのに、僕たちはすでに四層目に到達していた。


 破竹の快進撃と言っていい。ガルム達と四人で挑んだ時もここまで早いペースで進むことはなかった。


「思った通りだにゃー、めっちゃバランスいいっしょ、このパーティ」


 リナが、ニコニコと素材をはぎ取りながら声高らかに言った。


「大丈夫ですか?」


そんなリナを横目に、岩に腰かけて一息ついているマリエに声を掛ける。


「ええ、ありがとうございます……リナさんもなんだか楽しそう」


まるで子供を見守る母のような目で、マリエはリナを見つめている。


「守銭奴、なんて言われる事もありますけど、うちの孤児院にいつもたくさん寄付してくれるんです、リナさん」


 微笑むマリエの顔は慈愛に満ちているようだった。


でも、リナの、ほくほくとした顔で「アルトにゃんの加護、使える」なんてつぶやきを聞いてしまった僕は、マリエの表情を見ながら、何とも言えない気持ちになってしまった。


*


五層に降りた瞬間、何か空気が違って感じた。

いつもと何かが違う、でも見た目は何も変わらない。

ただ、頭の中で警鐘だけが鳴っている。


「ねえ、アルトにゃん」


リナも感じているのか、真顔でこちらを見て身構えていた。

僕もうなずいて、マリエの前に立つ。


僕たちは慎重にダンジョンを進んでいた。

出てくる魔物も、四層とそう変わらない。

それなのに、空気だけが異様に重苦しかった。


「リナさ――」

「しっ」


少し開けた広場のような場所の入り口で、何か言いかけたマリエをリナが制する。

僕も思わず息を呑んだ。


(違和感を感じる、ちょっとだけ待って)


真剣な表情のリナに、僕もマリエも黙って頷く。


広場には何もない。

むしろ、それがリナに異常を知らせているようだった。

彼女が広場を凝視するが、何も見つけられない。


「しまった――」


広場に気を取られすぎて、マリエの背後に現れたホーンラビットへの対応が一瞬遅れる。

しかし、ホーンラビットの角によるマリエへの攻撃は、加護の靄によって防がれて、マリエには傷一つなかった。

すぐにホーンラビットを切り伏せてリナの方を振り返ってみるが、リナは、広場を見上げて、放心していた。


「岩竜……」


何もなかったはずの広場に、巨大な岩の竜がその姿を現していた――

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