「昨日ギルドで見た子を助けたら懐かれて褒められた」
ギルドでは相変わらず視線を感じていた。
「これ、大丈夫ですか?」
受付嬢に渡したのは、ダンジョン浅層の素材収拾。
彼女も僕がガルムに追放されたことを知っているのだろう。
心配半分、蔑み半分といった感じだ。
「大丈夫です」
昨日の感覚を思い出す。あれから少し街の外で体を動かしてみたが、やはり調子がいい。ソロでもダンジョン浅層くらいなら死ぬこともないだろう。
受付嬢は苦笑して、でも依頼手続きを済ましてくれた。
ギルドの隅で、ガルムとパーティメンバーのベロストロス兄弟の姿があった。
こっちには気付いてないようだ。
僕は逃げるようにしてギルドを出た。
*
ダンジョン、といっても自然発生した洞窟のようなもので、昔からこの街の近くにあるものだ。
この街の冒険者は大概このダンジョンからとれる素材で生計を立てている。
階層は不明、かつてガルム達と潜った時は五十層まで行ったっけ。
今回は一層か、もしくは二層での素材収拾だから迷う事も、強い魔物が現れる事もない。
何より体の調子がいい。
僕は素材を探しながら、魔物を次々に倒していった。
「おにいさん、おにいさん」
ふと声がする。
二層に続く階段の隅から、その声が、明らかに僕を呼んでいた。
「やあ、おにいさん。すまないけど傷薬はないかにゃ?」
先日ギルドで見かけたスカウトの子だった。確か、リナと言ったか。
見ると、ふくらはぎを鋭利な刃物で切られたような傷があって、血が滴っていた。
僕は急いで簡易ポーションをリナに渡した。
「ありがとにゃー、後で返すから安心してにゃ」
リナはポーションを受け取ると、傷口に振りかけた。すぐに血が止まるが、安いポーションだから完全治癒とはいかない。
「立てますか?」
「なんとかなると思う」
リナはよろよろと立ち上がったが、やはり傷のせいで少し足取りがおぼつかない。
「よかったら、一緒に出口まで行きましょうか?」
「そんな……いいの?」
リナはぱーっと顔を明るくして僕を覗き込んできた。
「え、ええ、ご迷惑でなければ」
「そんなことないにゃー、助かるよー」
「じゃあ、臨時パーティといきましょう」
「おっけー」
その一瞬、僕の身体が少しだけ重くなった感じがした。
「あれ?」
反対にリナが、急に足元を見て首を傾げた。
「傷が治った!? なんで!?」
そう言いながら、辺りをぴょんぴょんと跳ねまわる。
めちゃくちゃに見えて身軽で無駄のない動き、舞うかのように動きに、僕はちょっとだけ魅入ってしまった。
「あ……多分加護のせいかな?」
「加護ぉ?」
僕の加護は、ある程度の攻撃を無効化する。だから、パーティメンバーと認められたリナの傷も遡って無効化された、という事なのだろうか。
「ま、いっか、なんか体も軽いし、すごい加護だにゃ」
「そんなことは……」
「あ、そうだ、あたしはリナ。 よろしくね!」
「あ、はい。 アルトです」
「ほうほう、アルトね、じゃあ、帰ろう!」
それから僕たちは、魔物たちを退けた際に運よく見つけた依頼の素材を回収して、ダンジョンを出た。
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