路上占い、あれこれ146【占い師は邪魔される】

崔 梨遙(再)

モーニングコーヒー 朝の 1949 文字です。

 夜のミナミで路上占いをしていた時のことです。



『処女はおらんかあ~♪ 処女はおらんのか~♪』


 奴が来る! 奴が来る! 立花さん50代デブでハゲでお金持ちなのにスウェットかジャージの上下がやってくる。問題児、立花さんは今日もやってきたのだ。そして、当たり前のように僕の前に座る。そして1万円札を渡してくる。5千円札のことも多い。長居されるし、幾つも占わされるので5千円でも1万円でも不足なのだが、僕は占いに関してはお金に無頓着なので成立していた。


『今日は、まず俺がいつ処女と出会えるか? 占ってくれ』

『はあ・・・・・・あ、月単位で見ましたが立花さんは処女とは出会えません。背き合う関係です』

『ほな、年単位で見てくれ』

『はあ・・・・・・あ、年単位で見ましたが天と地がすれ違っています。上下の和合が無いので求めるものは手に入らないでしょう』

『手に入らないのは何年なんや?』

『少なくとも3年』

『長っ!? 俺、3年も処女と出会われへんのか?』

『そうなりますね。4年後以降に期待出来るか? と申しますと、そうでもないですし。ねえ、もう処女は諦めたらどうですか?』

『この前の5人組はどうやったんやろ?』

『ああ、中学生ですか? 1人は処女でしたけどね。今、男に興味が無いみたいですよ。っていうか、ダメですよ中学生は。せめて女子大生にしてください』

『そんなことを言うても・・・』

『あ』

『どうした?』

『あそこの2人、僕の好みですわ』

『なんや、ババアやないか』

『30歳くらいか・・・30代の前半でしょうね。僕、30代や40代が好きなので行ってきます』

『お姉さん達』

『ん?』

『何?』

『僕、占い師なんですけど、占いはどうですか?』

『占いねぇ・・・』

『興味はあるけど』

『お姉さん達だったら無料(ただ)にしますよ。どうですか? 幾つでも占います。ですが、その後で居酒屋に付き合ってください。勿論、食事代も僕が出しますから。いかがですか?』

『まあ、無料(ただ)なら・・・』

『占ってほしいかな・・・』

『では、こちらへどうぞ』

『なんや、崔さん、ナンパに成功したんかいな』

『ナンパじゃないですよ、まず占いです。立花さんは帰っていただいて構いませんよ。だって、若い子が好きなんでしょう?』

『私、恋愛運を見てください』

『はい』


 2人とも左手の薬指に指輪が無いことはチェックしていた。


『・・・いいですよ。新しいことを始めるのに吉です。もう、いつ彼氏が出来てもおかしくない運気です。お姉さんからアタックしても構いませんよ』

『やったー! そうなんや』

『私も、恋愛運!』

『いいですね。女性に有利な卦がでました。モテ期です。選べる立場です』

『やっぱり! 奈緒子、あの人と付き合ったら?』

『ええ・・・でも〇〇さんも気になる。涼子ならどっちを選ぶ?』

『うーん、それを決めるのは奈緒子でしょう』

『まあまあ、運命のお相手は僕かもしれませんし。じゃあ、飲みに行きましょう』

『おいおい、俺も連れて行ってくれ』

『立花さん、まだいたんですか?』

『占い師さん、この人は何?』

『僕は崔といいます。この人は若い子や処女が好きな御方です』

『そうなん?』

『キモっ!』

『俺が食事代を出すから俺も連れて行ってくれ』

『こんなこと言ってますけど、どうします?』

『まあ、ご馳走してくれるなら』

『同席を許してもええけど』

『じゃあ、4人で居酒屋に行きましょう。立花さん、邪魔しないでくださいね』



『いやぁ、楽しかったですね』

『うん、楽しかった』

『2人とも、電話番号を教えたでしょ? 気が向いたら連絡くださいね』

『うん、わかった』

『連絡するね』

『立花さんも楽しかったでしょ?』

『俺は全然楽しくない。会話に入れなかったんやぞ』

『だって、オッサン、キモイし』

『若いことか処女が好きなら私達と飲んでも楽しくないでしょ?』

『オッサンは不純異性交遊しときなさい。捕まるから』

『私達、若い子と比べられるのも嫌だし』

『本当、若い子がいいなら若い子の方に行ってよって感じ』

『いやいや、俺は・・・あんた達でもええんやで』

『嘘ばっかり、若くなくて悪かったわね』

『じゃあね、崔さん。終電の時間やから』

『またね、崔さん』

『うん、またね-!』

『俺、全然おもしろくない!』



 僕は家で奈緒子か涼子から連絡が来るのを待った。すると、両方から誘いのメールが来た。2人とも、『今夜、飲みに行きませんか?』だった。今日は土曜日。どっちにしようかなぁ・・・どっちと飲みに行こうかなぁ・・・考えるのが楽しかった。何かが始まる予感がした。ドラマか? これからドラマが生まれるのか? どんなドラマが始まるのだろう? 僕はウキウキしていた。



 昨夜、立花さんは、不満そうだったけれど。僕は全く気にしていなかった。飲み代を払ってくれたのは良いが、正直、立花さんは存在自体が邪魔だった。




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路上占い、あれこれ146【占い師は邪魔される】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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