〈第二話〉 サヨナラの魔女・ならさん
「。。へえ?」
意外な言葉にわたしはフリーズした。ならさんを笑わせる。。?一瞬冗談かと悩んだが、顔がマジな気がする。とくに周りが。笑わせる。。?さっき笑ってた気がするけど。?いまだに理解できてないわたしをみて、くりさんが代わりに説明しだした。
「ちゃんと説明すると、一年以内にさよさんを心の底から笑わせることができたら合格。魔 法の使用は OKで、くすぐって笑わせるのはだめね。特に、特別な条件はないわ。」
「つまり、いつ・どこでも笑わせてもいいよー。ってこと。期限はありだけどね。」
「え、それだけですか?」
あ。
つい、うっかり、本音が出てしまった。実際に一人だけ笑わせるだけで五大魔女の一人になれるのはおかしいと思う。それとも、そんな簡単になれるもんなのかな?
「まあ、そうなるわよね。」
「他の子も言ってたよねー。」
(他の子。。?)
どういうことだろう。他にも、試験を受けた人がいるのかな。でも、なんで笑顔の魔女の席は空いたままなんだろう。みんな、落ちたとか。。?それとも、みんな同じ内容なのかな。いや。それはない。だって、魔女試験はその人の特性に合わせてるし。。。でも、こんな試験にたくさんの人が落ちるとは考えられない。うーん。考えれば考えるほど頭が混乱する。
「こんな試験、簡単じゃねーか。って思ったな。」
「。。え!」
「はあ。これだから、馬鹿は困るんだよ。」
心を読まれた気がした。というか、そういう魔法じゃないかと思った。
ため息を付きながら、あいさんは手を頭に当てた。背は低いのに威圧感を感じる。
あれ?そういえば、関わらないんじゃ。。
「いい?簡単に言えばこの試験は難しい。大体、30人以上やっても、誰も受かんねーぐら いだよ。」
「誰も?試験の内容は全く同じで。。?」
「ったりめえだろ?」
「わざわざ変えるのめんどーだしね。」
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃないわ。」
やばい。
わたしは頭を抱えた。聞いただけじゃ簡単そうなのに。なのに、だれも、受からなかったの?!しかも、わたし魔法が少ししか使えないよおおお。
「その、試験の内容変える。なんてできますかね。。?」
「むりね。」
「そこをどうにか。。」
「むりね。」
「そんなあああ。。。」
わたしがこんなに嫌がってるのには理由がある。それは、不合格者の末路。
魔女試験に合格した少女は無事に資格をもらえて魔女になれる。しかし、不合格になれば処刑。そう処刑。あの処刑だ。理由としては、魔女狩りのせい。資格なしの魔女は魔女狩りの対象。そして、試験は一生に一度だけ。ってことは、不合格=資格なしの魔女=死。ぷらす、魔法店は魔女狩りをしてる国王の手の中。逃げたって無駄なのだ。つまり、わたしの一生が懸かっているのだ。だから、できる限り受かりやすいものが良かったんだけど。。。やっぱ、変更はだめみたい。あああああ。
「安心してね。」
ポンッとならさんが肩を叩いた。やっぱ、簡単なのかな?わたしなんかでもできr
「手は抜かないから。」
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「あああああああああああああああああ」
真っ青な空の下、ぼくは歩いた。今は説明会の後で、二人で店に寄りに行くところだ。さっきの声は隣にいる子、ラーちゃんの声だ。顔に似合わないほどの低音だったから一瞬誰かと思った。なぜこうなったのかは恐らく、試験のせいだろう。なんせ、ぼくを笑わせなきゃいけないから。
「わたし、遺書かこっかなあ。。。」
ここまで絶望されるのは心底びっくりだ。一人ぶつぶつと喋ってるラーちゃんを横目で見る。今まで、何人もの少女を見てきた。みんな、いつも不合格率を聞くとこのような状態になる。ぼくにとっては不思議でしかない。今までみんなが落ちたからって自分も落ちるわけではないだろうし。
「あ。」
ふと、彼女と目があった。さっきまでずっと下を向いていたから、目があったのはこれが初めてかもしれない。くすんだ黄色の髪がサラサラと揺れた。瞳はうすい赤色。例えば、ほっぺたの色みたいな感じ。背は低くて、でーさんより少しだけ低いぐらい。同年代だと、幼く見える方なのだろう。
「ねえ。そういえば気になってたんだけどさ、そのリボンなーに?」
なぜか、ふと気になった。
ぼくが指を指した先には、少量の髪を左の上側に集めてお団子にしていたところのリボンがある。一見普通のリボンだったが、よく見ると結構年季が入っていた。おそらく、大切なものなんだろう。
「こ、これですか?これは、お母様がくれた贈り物です。生まれたときにわたしの髪色に合 わせて作ってくれたんです。」
「。。いいお母さんなんだね。」
「はい。。!」
彼女が、照れくさそうに笑った。わーさんとは違って、この子の笑顔は花みたいな感じだ。しかし、よく失くさないでいられるなー。ぼくなら、失くす自信がある。
「そこのお嬢ちゃん!」
話していると、見慣れた顔のおばさんに声をかけられた。近くのお店の人だ。そこでは、果物と野菜など幅広く売っていて、他のお店と比べると安くてよくお世話になっている。
「おひさしぶりです。」
「ああ、久しぶりね。お買い物かい?よかったらウチでなにか買わないかい?」
「いいですね。そうします。」
今日は祭りがあるから、ここのお店も屋台をやっているみたいでぼくたちは早速お買い物を始めた。いま、お買い物をしている理由はラーちゃんがぼくの家にこれから住むため。他の魔女見習いもだけど、なるべく一緒に行動するためにこうなった。これで、何回目か知らないけどもう慣れてしまった。反対に、最初はラーちゃんが嫌がっていたけど、利点を話したら渋々承知してくれた。
「わああ!」
ふと、横を見るとラーちゃんが売り物をみて目を輝かせていた。たしか、彼女はお嬢様だったからきっとこういうとこは初めてなんだろう。
「ラーちゃん、好きなだけ選んでいいよ。」
「え! いいんですか!?」
「一応、お金は結構持ってるからね。」
嬉しそうに彼女は売り物を取り始めた。パン、クッキー、りんご、いちご、バナナ、ぶどう、トマト、キャベツ、レタス。他にもいっぱい取っていった。
あれ?こういうときは遠慮とかあるんじゃなかったっけ?
最終的に、彼女は両手にいっぱいの食べ物を抱えていた。なんか、嫌な予感がする。
「お会計、銅貨■枚です。」
やっぱり予算オーバーだった。正確には言えないが相当高い。ぼくの1ヶ月分の食費と同じ、いやそれ以上かもしれない。
「あ、意外と安いですね。」
横で、ラーちゃんがびっくりした。この値段でよく安いって言えるね。ぼくは、高すぎてびっくりしているけど。心の声をぐっと堪えた。こういうのは言っちゃだめな気がする。さすがお嬢様。金銭感覚が理解できない。というか、そもそも銅貨を見るのも彼女にとっては初めてかもしれない。
チャリンチャリン
ああ。本を買うためにお金をためといていたのに。
「毎度あり。」
「ありがとーございます。。。」
とぼとぼと、ぼくたちは屋台から離れていった。
がっかりしてるぼくとは裏腹にラーちゃんはとっても喜んでいた。まあ、さっきよりは元気になっていたし結果オーライなのかな。
外を見るともう祭りの準備が終わり、祭りが始まる時になる鐘がなった。
ゴーンゴーン。
「そういえば、明日からなにをすればいいんですか?」
ラーちゃんがこっちを向く。
紙袋の間から彼女の顔がちらりと見えた。にしても、さっきに比べてよく喋るなー。やっぱ食べ物効果かな?
「うーん。まあ、ぼくの仕事の助手かなー?」
「ならさんの仕事って何をするんですか?」
「説明すると長いよー。」
「それでもいいですから。。!」
やばい。めんどくさいことになりそう。でも、目の前のラーちゃんはぼくをキラキラした目で見つめていた。どうにか、ぼくは彼女から視線をそらした。
「明日になったらわかるよ。」
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