第3話
エピソード3:表裏一体
数日後。無線配車で呼び出された目的地にいたのは、やはり先日の桂だった。
桂は等海に乗車するなり、静かに、しかし熱烈な視線を向けてくる。
「凪海さん、俺はどうしても、もう一度あなたに会いたかったんです!」
桂はこの数日間、等海の車両を呼びたくて同時刻の同じ場所へ毎日タクシーを呼んでいたという。
そしてついに、等海と巡りあった。
桂は、等海が数日前に彼を乗せた時のタクシーレシートを助手席のシートに置いた。
自分のプロの記録が、過去の凪海への欲望の道標にされたと感じた。
桂は静かに微笑みながら目的地を伝えると「少し遠回りでもかまわないので、ゆっくりめでお願いします。」と付け加えた。
そして「誰にも言いません。あなたは、あの頃、僕たちに夢を見せてくれたスイーティティの 凪海さんでしょ?」
等海は、ルームミラー越しにチラッと見ると、半ば諦めたように無言のまま、車を発進させた。
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