くたびれ男の異世界冒険者~思えば変な所に来たもんだ
姫野 りぉ
異世界の始まり
第1話 訳が分からない┅┅
「あなた!シンシア!シンシアが死んで┅┅ううっ┅」
「どうした!死んだって!」
「黒焦げ┅火事で┅火事で死んだのぉ!ああ!いやぁ!┅┅あぁ!┅プープープー┅┅」
「カレン!カレン!┅┅」
それは突然の国際電話だった┅
カナダにいる妻カレンから愛娘の悲報・・・
何度か電話してやっと繋がり彼女がポツポツと話したのは娘が遊びに行った先で火事に巻き込まれ死んだと言うのだ┅
「黒こげでシンシアか分からないの┅でも┅お気に入りのネックレスが┅それにあの子のピアスが2つ┅
私がいけなかったの!
友達だからと言って許したばかりに┅┅ごめんなさい!ごめんなさい!私が悪いの!わぁー!許してぇ!私が!私が殺したのよ!」
「落ち着け!黒こげならまだ分からないだろ?
俺は信じない!信じないぞ!
シンシアが死んだなんて┅そんなの嘘に決まってる!」
「私よ!私が殺したの!ごめんなさい!あなたのシンシアをごめんなさい!いゃあ!」
「カレン!カレン!」
「私だ!悪いがカレンはもうずっと錯乱していて寝てないし何も食べて無いんだ┅」
「お義父さん┅それで実際はどうなんですか?」
「それが┅残念だがシンシアは┅私と婆さんで
明日教会で葬式の後に墓へ┅」
「勇作!あなたが日本へ行ってる時にとても残念だわ┅
今のカレンは気が触れた様に錯乱してるわ
そして自分を責めて死のうとするの┅だから早く帰って来て
あなたがあの子を助けてあげて!お願いよ!」
「お義母さん┅┅」
言葉にならなかった┅┅
それからは転落すると言う事を実感したんだ
商社に務め海外勤務で多くの国を渡ったがカナダで出会ったカレンと結婚してトロントに家を持った
トロントの彼女の実家の近くに住んだのは俺が日本と往き来するからだ
日本で暮らす事も考えたが彼女は日本語を話せないし俺の両親も古い考えの日本人
特に母さんとは馴染めなかった
終いには嫁か親かを選べと言われ俺は嫁を選んだ・・・
親と一生共に暮らすより嫁と暮らす方が長いんだ!
それに親は先に死んで行くんだろ?┅
いつの間にかこんなドライな考えになったのは海外ばかり行ってたからなのか?
そんな俺達に両親は冷たい顔で出て行けと┅
どうすれば良かった?選べと言われて嫁と別れるのか?
親は大事だが俺の人生もだろ!
親兄弟から疎遠になったのはそんなつまらない事からだ
そしてカレンは気が狂った┅
否ちがう┅自分を殺してしまった
俺を見るとシンシアだと叫び狂った様に暴れる
口にするのは【私が殺した】とばかり┅
どうも俺の顔を見るとシンシアに見えると言うのだ
フッ┅┅親バカと言うか俺はシンシアを溺愛していた
何時も一緒で何時も手を繋いで┅
何時も一緒に寝ていたんだ┅
「あなたは私よりシンシアを愛してるわね♪」
「そんな事は無いさ、愛してるよ
シンシアは俺の娘で君の娘だよ
2人の可愛い娘だろ?」
「じゃあ早く会社を辞めてこのトロントで一緒に暮らしましょ♪」
「ああ┅もう少しでそれも叶うよ」
「お父さんの会社で働けば良いのよ、何も無理して自分で探さなくてもね?」
「アハハ、証券会社が来てくれと行ってる、今の会社の企画が済めば辞める事にしてあるからね」
そうなんだ!来月には辞めてカナダに住む事にしてたんだ!
それなのに┅┅
カレンはおかしな行動ばかりするから一緒にと言われた┅そして
「勇作┅┅あの子が死んだぞ┅
ナイフで胸を何度も刺して┅
どうしてだ!どうしてあの子だけが!勇作!どうしてここに居ない!
なんで日本なんかに居るんだ!」
「あの子は!あの子はあなたの助けを求めてたのよ!
なのにあなたは日本に!」
「自殺したのか┅┅それは┅┅」
頭がまた真っ白に┅ハハ┅シンシアが死んだと言われた時は信じなかった┅┅そんなの嘘だと
でも墓へ行った時は頭が真っ白に┅
そして今も┅┅カレン・・・
「勇作!おまえは冷たくて酷い奴だ!家族が!嫁が苦しんでるのに逃げたんだ!
シンシアの事やあの子の苦しみからも逃げて知らん顔だ!
もう顔も見たく無い!許さんぞ!」
「やはり日本人は家族より仕事なの?そんなに自分の事が大事なの!あの子はあなたを愛してたのよ!」
┅┅┅親兄弟から見放され今度は嫁の親からも
つくづく俺は幸せとかに縁遠いんだな┅┅
それから坂をコロコロと落ちる一方で会社を辞めると言ってたからもう俺の席はなかった
そしてカナダの証券会社からも無理だと言われた
カレンの両親からは絶縁され家も後処理で失くした
2人の墓へ行くが多くの人に拒まれ近寄れなかったのは自業自得なのか?
何がいけなかった?会社の仕事を放って嫁の介護したが良かったのか?
早く辞めてカナダで暮らしたが良かったのか?
アハハ!答えなんて後から何とでも言える!
そして今は1人で安アパートに住んでるとはな┅┅
やる気?そんなの失くしたよ、生きる気力もない┅┅フッ
そんな男が年を取ってまだ生きてるなんて笑えるな
もうとっくに50を過ぎてしまった
仕事はコンビニの店員や深夜の宅配便流通センターとかバイトばかり、働くのが嫌と言うより惰性で生きてるだけだ
いやはやそんな俺が53歳で死ぬとは┅┅やっとかな
「お、おい!金!金を出せ!」
「はぁ?コンビニなんかに金が有る訳ないだろ!」
「い、いいからそのレジの金を寄越せ!じゃ無いとこの包丁で!」
「馬鹿か!今のコンビニはスマホで決済すんだよ!
現金なんかで買う奴なんて居ないんだ!」
「良いから!金を出せ!」
包丁を振り回す強盗はまだ若い男だ、遊ぶ金が欲しかったのだろう
働きもせず金に困っての馬鹿な考えに取りつかれたのか┅┅
「この!この!金!金が無いと!」
「だから辞めろ!あっ!┅┅」
「ひぃ!おまえが!おまえが悪いんだ!俺じゃ無い!ヒイィィ!」
バタン!ガシャガシャガガーン!
バタバタ!タタタタ!
「神崎さん!神崎さん!しっかり!」
「┅┅これは?血┅┅包丁?ハハ┅痛いな?┅┅」
「直ぐに救急車が来ます!しっかり!警察も!」
「あの男は?┅┅」
「逃げました!そんなのより!」
ハハ┅そうか包丁が刺さってるって┅┅死ぬのか┅やっとかな┅
シンシアとカレンの所へ┅
今度は謝らなくちゃ嫌われるな┅
もぅ力が┅┅会えるかな┅┅┅
「神崎さん!神崎さーん!」
神崎 勇作 53歳 独身
なんの事は無い1人の男が死んだだけだ┅┅
はたして良い人生だったのか?
悪い人生だったのか?
ある時まで良くてある時から悪くなった・・・
人の人生なんてそんなもんだ┅
人は振り返るのは年を取ったからと言う
懐かしい時代を思い出して年を感じるとも┅
キラキラしてた時代を持つ者は青春とかを謳歌したのだろう
別れた人を思い出して今の暮らしを思うのは一時の感傷か?
昔は良かった┅それは今は悪いと言ってるんだぞ?
今が良ければ昔は酷かったとか悪いと思うだろ?
53歳まで生きれたら良しと思わないと俺の人生は浮かばれないだろ?
大学出てからがむしゃらに働いて海外駐在員になったんだ
そして30代で課長になった┅
後少しで大手証券会社に引き抜かれる所だったんだ
でも家庭より仕事を優先して一緒の時間は少なかった
愛してるから金を稼ぐ?家族の為?豊かな生活をする為に?
稼がないと満足な暮らしが出来ないから?
はん!結局は自分の為なんだ┅
妻や子供の為とか言ってるが全部自分の為!自分が幸せになりたいから!自分が満足するからだ!
そんな俺は糞みたいな一生を何故かホッとした気分で眠りについたんだ┅┅
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
『この魂をどうするのですか?』
『そうじゃな┅あの星に落とせば良かろう』
『こことは次元が違いますが?』
『仕方ないじゃろ?この地球では受け入れられんと言うておる』
『はぁ?この魂は地球の者ですよ?』
『そうじゃが要らんらしい 生きると言う事を望まん魂じゃからな』
『それならあの星でも同じでは?』
『あの星はまだ若いからの?地球と違い科学が無い世界じゃ
そんな星ならこの魂もゆっくり生きるじゃろ?』
『はぁ~あのですね?あの星は命が凄く軽いのですよ?
そのような星へこんな生くらが行けば直ぐに死にますけど!』
『そうとは限らんじゃろ?
意外としぶとく生きるやも知れんぞ?
それに記憶を残してやるとしよう この地球でそれ程良い運命ではなかった様じゃしな』
『記憶をですか?転移者では無いのですよ?』
『面白いではないか?くたびれた魂が足掻いて生きるのも悪く無いぞ?フォホッホホ!』
『また変な事を┅┅私は責任持ちませんから!
全部創造神様の責任ですよ!』
『よいよい ではあの星へ落とすとするかの?
管理してるのはアフローディアじゃったか?┅┅フッ
テレスもあの子に良く言い聞かせるんじゃぞ?では!ほい!』
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅ん?
目が覚めた?生きてるのか?┅┅なんでだ?死んだ筈だが?
神崎勇作はこうして記憶を持ったまま転生した
したと言うよりさせられた┅
それは転移と同じ扱いとは知らず若くなって違う世界へと┅
名前 ユウサク 年齢 15歳
種族 ヒト族 称号 異世界人
HP 80 MP 200 体力 120 運 5
なんの能力もなくなんの訳も分からず落とされた命┅┅
俺はなんで生かされたのか?
なんであの世とかでゆっくりさせてくれないんだ┅
もう生きるなんて面倒くさいだけなんだがな┅┅
ユウサクは途方にくれるだけで今置かれてる状況を受けいれる事が出来なかった
誰だって異世界とかにポンと生き返えったならそうだろう
余程の異世界オタクとか現実逃避のニートなら喜ぶだろうが┅
能力無しと知れば気が狂うかも知れないな・・・
それ程この世界は能無しでは生きるのが厳しいと彼等は良く知ってる
剣と魔法の世界、貴族が最上位で世の中を支配してると言える
身分制度は貴族優位で平民は強いたげられるだけ
魔物とかモンスターと言う人間より強いのも普通にいるし、盗賊や野盗なんかも当たり前みたいなものだ
冒険者とかで特別な能力を持ってるなら貴族に対抗出来るかも知れない
そんな世の中で生き無ければならないのをまだ実感も理解もしてないユウサク
創造神の思い付きは果たして┅
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