志木原物語
ふちとなりぬる
第1話
夜の山肌を、赤い光が照らし続けていた。
風に運ばれてくるのは、焦げた木の匂い――そしてたくさんの叫び声。
年老いた男が1人、田舎の山中には不釣り合いな装いの
城は炎の中で、まるで巨大な灯籠のように揺れている。
いくつもあった長屋の屋根が次々と崩れ、火柱が夜空へ伸びた。
「……じい、あねうえは、まだこられないの?」
幼子の小さな問いに男は喉を詰まらせ、
子を抱く腕に力を込めた。
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