赤点ひこうき

@gagi

赤点ひこうき

 学校の屋上。凍てつく風が首筋を撫でる。


 僕は欄干に肘をつき、手元の紙に視線を落とした。

 

 そこには29点と赤字で書かれた英語の定期テスト。


 自分の学力から無理して入った私立の進学校。


 正直、全く勉強についてけない。


 母に高い学費を出させて。必死に勉強をして。今も頑張ってる。


 けど結果は29点だ。嫌になる。


 

 背後から錆びた蝶番の音がして、「辛気くせー背中だな」と男子生徒の声がした。


 友人の平岡の声だ。


 平岡が大きな腕を僕の肩に回して、僕の手元のそれを覗き見る。


「わはは、バカがいる」


 そう言うと平岡は僕からテストをひったくった。


 

 テストを折って紙飛行機にして、それを屋上の欄干から飛ばしてしまった。


 そのとき下から吹き上げるような風が吹いた。


 風に煽られた紙飛行機が、冬の高く澄んだ青空へと昇ってゆく。


「いい天気だ。授業サボっちまおうぜ」


 彼の腕の温もりが妙に心地よくて、 僕は頷いてしまった。


 そして、母の顔が脳裏をよぎった。



 


 

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